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星宮は不死川の返答を受けてから、静かに口を開いて
「まずは…この一年半、師範には大変お世話になりました。呼吸の事は勿論、それ以外にも…色々と…助けられ、支えられてきました。」
「私はいつも…与えて貰ってばかりで、師範には…まだ何一つ、恩を返せてはいません。」
「だから…これからは、柱として鬼殺隊を支えることで…この御恩を返していきたいと、考えています。___」
星宮は不死川への感謝と…そして、決意を述べた後
少し間を置いてから、ふたたび口を開き
「あとは…、…私にとって、師範と過ごしたこの一年半は…とても、幸せでした。」
「傍から見れば、何気ない師範との日常を『幸せ』と捉えるのは…少し大袈裟すぎるのかもしれませんが…、」
「それでも…私は…間違いなく、師範と過ごしたあの日々が幸せであると、胸を張って言えます。本当に…、ありがとうございました。」
星宮は真っ直ぐな瞳で不死川を捉えた後、深々と礼をし、自身の思いを伝え切った。
そして、頭を上げた後、不死川の方へとふたたび目を向けて
「最後に…師範は無理をし過ぎる所があるので…どうか、身体を大切にして…長生きして下さい。」
「…お伝えしたかった事は、以上になります。では、師範…私はこれで、____」
そう言って星宮が立ち上がり、背を向けた時だった。
今まで星宮の話を静かに聞いていた不死川が口を開き
「俺ァもう…お前の師範じゃねェ。そう呼ぶなら…もっと早くから呼んで、敬語も最初から使いやがれェ…」
呟くようにしてそう告げる不死川に対し
星宮は少し寂しそうな表情を浮かべながらも、背を向けたまま、ふっと軽く笑って
「…悪いな、こういう機会じゃないと…言えないんだ。」
「まァでも…お前の事はちゃんと師だと思ってたし…、今も昔も尊敬はしてるから…敬語使わないくらい許せ、__」
星宮はそう言って、そのまま部屋を出て行こうとすると
「……一度しか言わねェ、よく聞いとけ___」
立ち上がった不死川に声を掛けられたかと思えば、腕を引かれ
『⠀ ⠀ ⠀ ⠀』
不死川はそう一言、耳元で告げた後、星宮から手を離し
「早く行けェ、お前なら…もう十分やっていける筈だァ」
「それと…テメェも長生きしろよォ、俺より先に死んだら許さねェからなァ___」
淀みのない、澄んだ瞳で星宮を捉えながら
逞しくなったその背中を、押し出すようにして、そう告げた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年6月25日 9時