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あの日、星宮は男のもとを訪ねてからというもの



ここ一カ月の間は、任務をこなしながら、ほぼ毎日のように実家へと通い



そこで男と他愛もない会話を交わし、平穏な日常を日々過ごしていた。



そして男は、最期は最愛の娘に看取られながら、静かに息を引き取った。



その後、星宮は男の葬儀や遺品整理を全て終えた後、



親族に引き留められながらも、星宮家との決別を決意し



「(父さんが…『好きに生きていい』、そう言ってくれたから、もう私は…此処には戻らない。自分の生きたいように生きるよ、…父さん、母さん。)」



『星宮』の表札に一瞬目を向け、揺るぎない決意と少しの罪悪感を背負いながら



決して振り返る事なく、その場から立ち去っていった。


















***



その道中、星宮は街中を歩きながら



「(それにしても…またアイツに色々と世話になったな…。何か、礼でも…面倒くさいから、おはぎでいいか?)」



そんな事を思いながら歩いていると、ふと花屋に並ぶ一輪の花が目に入り



「(そういえば…母さんの花、選ぶ時…___)」



星宮の脳裏には、以前…母親の花を選んでいた時の、隠との会話が思い起こされ



『___…お母様のお花、決まりましたね!あとは…やはり、この機会に…不死川様へのお花も選ばれては…、』



そう声を掛ける隠に対し、星宮は怪訝そうな顔を向けて



『だから何で…私がアイツに花なんか……というか、アイツ…花の良さなんて分からないだろ、毟り取って食ってそうだし。』



『まァ…そんな事言わずに……不死川様、きっと星宮様からお花いただいたら、喜ぶと思いますよ…!』



顔を布で覆いながらも、ニコニコとした笑顔が伝わる程の空気を放つ隠を目にし、



星宮は若干その空気に押されながら、少し考え込むような素振りを見せた後



『………本当に…アイツ…、喜ぶのか…?』



『ええ!絶対、喜びますよ。そうとなれば、早速___』



星宮は乗り気な隠の言葉を遮るようにして、軽く頭を小突く。



『今は母さんの墓参りが先だ、…アイツに花送るかどうかは…後で、考えとく。___』



その時はそう言って、その場を乗り切ったものの



今現在、星宮は困惑した表情を浮かべながら



「(本当に送るのか…?アイツに?…おはぎの方よくないか?好物だし…でも、おはぎだと味気ないというか…___)」



ここ最近で一番考えを巡らせ、小一時間ほど花屋の前で、立ち止まっていた。

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作者名: | 作成日時:2023年6月25日 9時

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