検索窓
今日:17 hit、昨日:54 hit、合計:29,207 hit

72 ページ23

しばらくして、廊下から騒がしい足跡が聞こえてきたかと思うと、



「___……父さん…!」



襖が勢いよく開くと同時に、星宮の声が部屋の中へと響き渡る。



星宮は一瞬、側にいた不死川の方へと目を向けたが



すぐに男のもとへと駆け寄り、動揺した様子で



「…父さん…、何で…いつから…、どうして…言ってくれなかったの……」



痩せ細った男の手を握り、目を潤ませながら、そう問いかける。



男はそんな星宮を目にしながらも、表情一つ変えず、冷静な口調で



「…勘当したお前に、伝える必要などないだろう。それと…あの日、星宮の門を二度とくぐるなと言った筈だが、」



突き放すようにしてそう告げる男を目にし、不死川は内心



「(…ったく…この後に及んで、まだそんな事言いやがるのかァ…?不器用にも程が、____)」



苛立ちながら、そんな事を思いかけた時だった。



星宮が少しの沈黙の後、静かに口を開いて



「縁を切った父さんにとっては…もう私は、娘でも何でも…無いかもしれないけど…、…でも…それでも、__」



「……私にとっては…ずっと、父さんである事に変わりないし…たった一人の大事な家族だと、そう思ってる…。だから…、心配くらい…させて…欲しい、…___」



星宮は目に涙を浮かべ、声を震わせながら、男にそう告げる。



男はそんな星宮を目にし、一瞬目を見開いたかと思えば、視線を下へと落として



「………散々辛い思いをさせてもなお…お前は私を父親だと…家族だと、思ってくれているとはな…。」



そう呟いた後、ふたたび星宮のもとへ視線を戻し、



「一華、…今まで本当に…すまなかった。」



「…私にとっても…お前はたった一人の大事な娘であり…、大事な家族だ。____」



そう告げる男の様子は、今までとは打って変わり



その声や表情には、何処か温かみが感じられると同時に、



男は星宮の顔にそっと触れ、涙を拭い取りながら



「……一華、泣くな。お前の泣き顔は体に悪い、…余計に悪化する。」



「…あ…、…父さ…ん…。ごめ…、…____」



星宮は今にも溢れ出しそうな涙を、堰き止めようとはしたものの



大きい雨粒が次々と零れ、流れ落ちてゆくばかりだった。



男はそんな星宮の側に寄り添い、優しい眼差しを向ける中



「………、…____」



不死川はそんな二人の様子を目にした後、静かにその場を立ち去り



何事もなかったかのようにして、一人自身の屋敷へと戻っていった。

73→←71



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
206人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2023年6月25日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。