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それから半年経たずして、星宮のもとへ柱昇格の知らせが届き
鎹鴉を通じて受け取った手紙には、ニヶ月後の柱合会議を以って、正式な柱として迎え入れるとの事だった。
そんな知らせを受けてから、数日経ったある日。
風屋敷を訪れた隠が戸を開けると、そこには玄関で靴を履く不死川の姿があり
「不死川様…!おはようございます、随分とお早いですね…何処かお出掛けですか?」
そう問いかけると、不死川は立ち上がり、すれ違い様に
「あァ、…会いに行かなきゃいけねェ奴がいてよォ…アイツの飯の用意、よろしく頼む。___」
そう言い残して、その場を颯爽と去っていく。隠はそんな不死川を見送った後、屋敷へと上がり
「(不死川様、誰に会いにいくんだろう…?しかも、こんな朝早くから…)」
そんな事を思いながら、星宮の自室へと向かい、襖を開ける。
すると、そこには既に身支度を済ませ、不機嫌そうな表情を浮かべた星宮が立っており
「…遅い、早く飯の用意しろ。餓死する、」
「(餓死って大袈裟な…、)…今からご準備しますので、少々お待ちください。…___」
そう言って隠が背を向けた時だった。背後から「おい」と無愛想に声をかけられ
「(何だろう…何か言われるんだろうか…、最悪殴られるかもしれないなコレ…。)」
「…ど…どうかしましたか、…?」
隠がビクビクしながら振り返ると、星宮は少し落ち着かない様子で口を開き
「花を…買いたいんだが…、何か…いい花はないか。あと…何処で買えばいい、…」
隠は一瞬キョトンとした顔を浮かべた後、腑に落ちた様子で
「…不死川様に送られるんですね!だとすれば…そうですね、どんな花が、____」
すると、星宮は隠のもとへ近づき、軽く胸ぐらを掴みながら
「お前、ふざけてるのか?何で私が…アイツに花なんか送らなきゃいけないんだ、勘違いも程々にしろ。」
「え…?違うんですか、…!?では一体誰に……」
隠がそう問いかけると、星宮は掴んでいた手を離し、少しの沈黙の後
「………今日は、母さんの…命日だから、花を供えに行きたい…。」
静かにそう告げる。隠はそんな星宮に、微笑みかけながら
「…分かりました、ではお食事が済みましたら…一緒に花を選びに行きましょう、星宮様。」
星宮はそう話す隠に背を向けながらも「…頼む、」と一言告げ、
食事を済ませた後、隠と共に母親に手向ける花を買いに向かった。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年6月25日 9時