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導き ページ8

***

(黒羽 side)















「___カナヲ、紫何処に行ったか知らない?」



「ううん、見てないけど…。紫がどうかしたの…?」



「さっき紫に買い出し行ってもらったんだけど、紫ったら…頼んだもの何一つ買ってこなくって…」



「見て、これ…お菓子ばっかり。本当にもう…!」



「(あ…ラムネ入ってる…。)」















廊下から、そんな二人の会話が聞こえる中



「(お菓子買ったくらいで怒るだなんて…、アオイは糖分足りてないんだろうな…。)」



とある一室の押し入れへと身を潜め、先程買った飴玉を口へと含む。



数分前、買い出しを終えアオイのもとへと戻った際



『紫…何これ、?何でお菓子ばっかり…』



『ちゃんと買い出しのメモ渡したでしょう…!何で違うもの買ってくるの!』



何やらピリピリしたアオイに怒られてしまい、



『(これは…長引きそうな予感、)』



瞬時にそれを悟り、その場を後にし



押し入れに身を潜め、アオイの怒りが鎮まるのをただただ待っている。















その後、部屋の前にいた二人は何処かへと去り



「(そろそろ…出てもいいか、)」



襖に手を掛け、押し入れから出ようとするものの



「(あれ…開かない…。壊れた……?)」



何故か襖は堅く閉ざされ、私の力ではどうする事も出来ず



「(…まァいいや、)」



「(とりあえず…寝よ…。___)」



一旦脱出は諦め、真横に積まれた布団へと寄り掛かる。

















___私は暇さえあれば、押し入れの中で仮眠を取っており



薄暗く静かなこの場所は、自然と気持ちを落ち着かせる。



それと同時に、この場所にいると











『___紫、また此処にいたのか。出ておいで、』











笑顔と共に手を差し伸べてくれた…彼の事を思い出し



此処にいれば、また彼が見つけに来てくれるような気がして



「(…未練がましい…、)」



そんなありもしない事を期待してしまう自分に、何度呆れ返った事か。



想いを寄せていた彼は、四年前…戦場で命を落とした。



大好きだったあの笑顔は、もう二度と見る事が出来なかったというのに



彼が死んだあの日、私は一滴たりとも涙を流す事はなく



「(どうして…自分より、アイツなんかを優先したんだか…。___)」



ふとそんな事を思いながら、私はゆっくり瞼を閉じた。

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作者名: | 作成日時:2023年11月29日 0時

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