6 ページ32
｢はぁっ、はぁっ、｣
決して良いとは言えない呼吸音。
和也は10分ほど川でスイカを探した。
しかし、ひとつも見つからず、体調の異変を感じて上がってきた。
苦しそうに喘ぐ兄の背中をさするのは末っ子の優太。
太一は、必要なものを揃えると言って、走って家に戻って行った。
｢ごめっっ、はぁっ、すいかっ、、はぁっ、、、はぁっ、、｣
｢もういいからっ、お願いだから、無理して喋らないで。｣
優太が泣きながら言う。
それからはずっと苦しそうな呼吸音しか聞こえてこなかった。
｢93、、、、95、96！｣
和也に薬を飲ませ、携帯用の酸素を口に持っていってあげる。
指にはパルスオキシメーター。
ようやく落ち着いてきた和也の呼吸。
しかし、籠ったような、クリアーではない呼吸音。
｢がんばれ、｣
根気強く待ってみると、だんだんとクリアーになり、おかげでセミたちの鳴き声がようやく耳に入ってくるようになった。
｢なんか、残念な感じで終わるのが俺らっぽいね｣
キャスター付きのピザ窯を押しながら家に戻る太一。
その横を、弟ふたりがゆっくりと歩く。
｢そうだね、俺らっぽい｣
和也がクスッと笑う。
｢昔も似たようなことあったよね｣
｢俺らに内緒でプリン作って、学校から帰ってきた俺らに渡そうと冷蔵庫開けに行こうとしたら母さんが食べてたヤツでしょ？｣
｢そうそう！いやー、可哀想だったな｣
兄たちの大きな笑い声に紛れて嗚咽を漏らす優太。
｢泣くなよ！どこかで誰かが美味しく頂いてくれてるって！だから泣くな！｣
和也が明るく励ましながら肩を組むと、スっと前に回って和也に思いっきりハグする優太。
ちょうどそこは下り坂。
ピザ窯を押す太一だけがどんどんと進んでいき、和也と優太だけがしばらくそこに留まっていた。
｢気持ちだけでも嬉しいよ、ありがと｣
｢えっ、、！泣いてるの？｣
今まで止まらなかった優太の涙が一瞬止まる。
それは和也の声があまりにも震えていたから。
実は、和也は兄弟の中で1番の泣き虫。
そんな彼が、不憫な弟の姿を見て涙を流さないわけがなくて。
ずっと笑って我慢していたが、ハグをされて、緊張が解けたのだろう。
｢アイツらいつ帰ってくんだよ。｣
ひとり家でつぶやく長男であった。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←5
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
消費期限(プロフ) - ちえさんさん» ほんとに残念でしたよね〜💦二宮くんと太一くんのコメントがお兄ちゃんすぎて激アツでした😌 (9月5日 22時) (
レス) id: e1b4d7c7fb (このIDを非表示/違反報告)
ちえさん(プロフ) - DASH、見ました。あれは残念でしたね。時差で水量が増える川の怖さなんかも伝わると良いけれど。お話の兄弟たちも思いやりがあって、暖かいです。。 (9月5日 18時) (レス) @page32 id: 1ddc255e22 (このIDを非表示/違反報告)
消費期限(プロフ) - 個人的に、ほとんどの物事が『めっちゃいいな』より『なんか、いいな』ってのがベストだと思ってます。なので、智くんの曲流しながら読んで、そういう感想をもってくれたの、、とっても嬉しいです。 (7月24日 1時) (レス) id: e1b4d7c7fb (このIDを非表示/違反報告)
ちえさん(プロフ) - タイトルと同名の曲をBGMにして読みました。語彙力無くて申し訳ないけど『なんか、いいな』って感じた物語でした。 (7月23日 11時) (レス) id: a409136931 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：消費期限 | 作成日時：2023年7月15日 22時
