26.花より団子 ページ28
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「なんだ、浴衣じゃねーの」
『え、期待してた?とか言って松野も私服じゃん』
夏休み前の学校最終日、鬼の形相で1組に現れた私と場地に松野はそれはそれは驚いた様子だった。
そして何事かと慌てる彼に「今一番行きたい場所はどこか」と問い詰め、いまいち要領を得てない中でも「こ、コンビニ?」と答えた松野に私達は大変激怒し、彼を大いに混乱させた。
今思えば、本当に申し訳ないことをしたと思う。
そして、事のあらましを説明した上でもう一度同じことを問うと松野は「それなら祭りがいいんじゃないっスかね」と言った。
聞けば、ちょうど1週間後に隣町で毎年恒例の夏祭りが開催されるとのことだった。
「いいじゃん、祭り」
『え、こういうのって友達と行ったりしないの?』
「行くのは武蔵野祭り。てかお前こそ予定既に入ってんの?」
『私に祭り一緒に行くような友達居ると思う?』
「答えにくい質問ヤメロ。じゃ、決まりな。…千冬も行くだろ?」
「えっ、俺!?」
『当たり前に来るよね』
こうしてトントン拍子で決まった計画。
最初はいらぬ気遣いしてたくせに、いざ当日顔を合わせれば普通に普段着で来た私にあからさまに残念がってるご様子。案外松野って太々しいとこあるよな。まぁそういうとこ嫌いじゃないけど
「なー、早くいこーぜ。腹減った」
対して場地はといえば人の服装なんかに全然興味ない。
まさに花より団子って感じ。……それはそれでなんか腹立つな。
『まぁ場地って色気より食い気だからなー』
「ンだそれ」
怪訝そうに眉を顰める場地に『何でもない』とかぶりを振る。
説明したところでどうせ首を傾げて「何言ってんの?」と聞かれるのがオチだろうし。
場地も場地で、聞いてきた割にさして興味がなかったのだろう。「ふーん」と適当な相槌を打ち、そしてその場でいきなり屈伸をし始める。かと思えば「神社まで競争しようぜ!ビリはジュース奢りな!」と唐突に宣言して、1人神社までの道を走り出す。
『いやいや、何?意味わかんないんだけど…?』
場地の思考回路は本当によくわからない。今の話の流れで何故そうなった。しかも神社までまだ少し距離があるのに、頭沸いてるんだろうか。
「あっ、ずるいっスよ場地さんっ!!」
けれど松野までそう言って場地の背中を追いかけ始めるから、これはもう走らないなんて選択肢はなくて。
私はため息を吐きつつも2人の後を追った。
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玲 - おもろい✨続き楽しみにしてるます! (3月29日 19時) (レス) @page16 id: ed098355db (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます、励みになります!ぼちぼちの更新になりますが頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2023年3月16日 21時) (レス) @page15 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください😆 (2023年3月16日 8時) (レス) id: ca28bfbf34 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 甲賀忍者さん» 甲賀忍者さん、嬉しいお言葉ありがとうございます!更新スローペースですが気長にお待ちいただけたら嬉しいですm(__)m (2022年8月29日 1時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 面白いです!留年コンビいいですね!応援させて下さい! (2022年8月27日 14時) (レス) @page8 id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年7月14日 16時