25.お礼と詫び ページ27
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『行きたいとこ?別に特にないけど強いて言うなら業務スーパーとか?』
それは、夏休みを翌日に控えた放課後のこと。
先日の中間試験の追試で見事補習を免れ、再留年まっしぐらの道をなんとか軌道修正することができた場地は各教科担当の先生から驚嘆の声を上げられ、そして大いに褒め称えられていた。それはまるでクラスから東大進出者が出たみたいなノリだったが、場地のとった点数はあくまで補習をギリギリ免れた点数であり、追試を受けた者の中でも点数は下から数えたほうが断然に早い。
それでも褒められて悪い気がしないどころか機嫌が最高に良くなってしまうのが場地圭介という男で、そんな中でAにこう言ったのだ。
行きたいところどこでも連れてってやる、と。
場地としては飲み込みの悪い自分にめげずに勉強を教え続け、再留年回避という希望の光を与えてくれたAに礼がしたい気持ちであったため、海だろうと有名な観光地だろうと、どこにでもAを連れていくつもりでいた。
そうして返ってきた答えが、冒頭の台詞。
「いやもっと他にあんだろ」
顔を顰めてAの言葉を跳ね除ける場地にAは何とも不服そうな顔をした。
『…例えば』
「海とか」
『絡まれたくない、無理』
「女が好きそうな店とか」
『それ絶対場地楽しくないでしょ』
「じゃあどこならいいんだよ!!」
『だから業スーだって言ってんじゃん!!!』
「ンでだよ!!」
ただ勉強を教えてくれた礼がしたいというだけの話でこうもギャンギャンと騒がしくなるのはもはやある意味才能である。
最初はダブり者の場地とAにビビりまくっていたクラスメイトたちも、3ヶ月も経てば耐性がつくのか騒がしい2人を横目にしても「あー、いつものか」と受け入れの姿勢を取っている。
『だっから場地は女心がわかんないんだよ!』
「Aのソレが女心っつうならもれなく全員わかんねぇよ」
『あー、わかった』
額に手を置き天を仰ぐA。
今回ばかりは場地の方がもっともな発言をしているが、Aとて引く気はさらさらない。
『じゃあこうしよう。間をとって、松野に聞く』
何が間で何がじゃあなのか全くもってわからないが、どうやら場地は納得したらしい。「上等だ」とその案を呑み、Aと共に1組へと駆け出した。
一部始終を見ていたクラスメイト達の思考は「やっぱアイツらわけわかんねぇな」と満場一致していた。
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玲 - おもろい✨続き楽しみにしてるます! (3月29日 19時) (レス) @page16 id: ed098355db (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます、励みになります!ぼちぼちの更新になりますが頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2023年3月16日 21時) (レス) @page15 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください😆 (2023年3月16日 8時) (レス) id: ca28bfbf34 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 甲賀忍者さん» 甲賀忍者さん、嬉しいお言葉ありがとうございます!更新スローペースですが気長にお待ちいただけたら嬉しいですm(__)m (2022年8月29日 1時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 面白いです!留年コンビいいですね!応援させて下さい! (2022年8月27日 14時) (レス) @page8 id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年7月14日 16時