21.早退 ページ23
・
「…オマエ、その顔どーしたん?」
入学式から早3ヶ月。
今のところ真面目に授業に出席している場地に比べて少々遅刻・サボりの目立つAが2時間目から授業に参加することは日常茶飯事。けれどいつもと違いその左頬に大きなガーゼが貼られていることを疑問に思った場地が放ったのが、冒頭の一言。
『別に、場地にカンケーない。…人の心配より自分の心配したら。今日3限ミニテストだし』
場地の問いに、ぶっきらぼうに返答するAは見るからに不機嫌、いつもはクラスメイトにビビられないよう物腰柔らかく気を遣って接している彼女だが、今日はその限りではないようで。
クラスメイト達は背筋を凍らせ飛び火が来ないようにと一斉に視線を逸らす。
完全に虫の居所の悪い彼女に、誰も関わろうとはしない。
けれど場地はどうやらその限りではないようで。
いつもはニコニコとうざったいくらい絡んでくるくせに、自分の都合が悪いとすぐこれか。
つーかその台詞完全ブーメランだろ、と言いたげな視線を送るがAは一切無視だ。
「…何があった」
『……』
眉を顰めた場地の問いに、Aは答えない。
それどころか顔も見ようとしない。頬杖をついたまま場地の声など一切聞こえていないかのように視線は前に向けたままだ。
「おい」
『い”っっ…』
決して気の長くない場地がグイッとAの手首を掴み上げる。口調の割にそこまで乱暴でない動作だったが、彼女は小さく呻き声をあげ苦痛の表情を浮かべた。
「ワリ…」
『……』
予期していなかったAの反応にすぐさま力を緩めた場地の手をAは無言で勢いよく振り払う。
“ほっといてくれ”という、彼女の最大限の意思表示だった。
全身で圧を出し机に伏せるAに触らぬ神に祟りなし、クラスメイトはそさくさと自席に戻り次の授業の準備を始める。
残り数分足らずで、チャイムが鳴り授業が始まる時間だった。
「フケんぞ」
それなのに、やはり、場地だけは。
徐に立ち上がり再びAに声をかける。
そして、自分とAのカバンを雑に片手で掴み、反対の手でAを引っ張り上げる。今度は、手首ではなくブレーザーだけを掴んで。
碌に返事も聞かずに勝手に荷物まで持たれて自分を引きずるように歩き出す場地に『何すんの』、『離せ!』、『クソメガネ』と抗議の声を上げるAだが、場地は一切耳を傾けない。
Aの抗議の声はしばらくの間学校全体に響き渡っていた。
363人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玲 - おもろい✨続き楽しみにしてるます! (3月29日 19時) (レス) @page16 id: ed098355db (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます、励みになります!ぼちぼちの更新になりますが頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2023年3月16日 21時) (レス) @page15 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください😆 (2023年3月16日 8時) (レス) id: ca28bfbf34 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 甲賀忍者さん» 甲賀忍者さん、嬉しいお言葉ありがとうございます!更新スローペースですが気長にお待ちいただけたら嬉しいですm(__)m (2022年8月29日 1時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 面白いです!留年コンビいいですね!応援させて下さい! (2022年8月27日 14時) (レス) @page8 id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなこもち | 作成日時:2022年7月14日 16時