14.爆発 ページ16
・
『は…なに、その腕……』
三角巾に吊られた左腕は、ただただ痛々しくて。
昨日まで普通だったじゃん、なんて言葉はクラスメイトのヒソヒソ話によって飲み込まれる。
「場地君、昨日の騒ぎで怪我したんだって。気の毒だよね」
「ほんと、とことんあわれな奴だなあ。ガリ勉なのにあんなおっかない奴らに目つけられてるなんて」
昨日の騒ぎ…っていえば、他校のどこかの暴走族のチームが押しかけてきて校内で暴れまくって、その関係で1組の松野千冬とそのお友達が異例の謹慎処分を喰らった───ってことくらいは、とっておきの場所でサボりを決め込んでいた私の耳にすら入ってくるくらい大きな騒動だったらしいけど。
当の本人は至って普通。まぁ、纏う空気は殺伐としてるけど通常範囲内。…何があったかくらいは、聞いてもいいのかな。
『それ折れてんの？』
「折れてねーし大したことねーよ、そのうち治るワ」
『そ…。単純に巻き込まれた、って訳でも無さそうだけど何が「オメーには関係ねーよ」』
言葉を遮られ、険しい目つきを向けられる。
…きっとこれは、線引き。
これ以上入ってくるなって、踏み込んでくるなっていう、場地からのサインという名の警告。
何となく、場地って気さくそうで自分のテリトリーには容易に踏み込ませない感じあるなとは感じてたけど。やっぱり直に面と向かって言われると結構傷つく。
「Aが強ぇのは知ってる。けど、自分から余計なモンに首突っ込むのは違ェだろ」
『……余計な、こと』
いや。この胸の内に込み上げてくる感情は、悲しみよりも……
怒り。
『あのさぁ。友達が怪我してたら心配するのは当たり前、関係なくないし。友人って、知らないならお手元の辞書で今すぐ調べなエセガリ勉』
「エセ…？何言ってんのオメェ」
『いやテメェが何言ってんだって話。心配かけさせんなバカ』
「口悪っ。…Aは俺の母ちゃんか」
どんなに怒っても心配しても、結局私の言葉なんて場地には何ひとつ届かないのか。
自分でも面倒くさいなって、何様だよって思うけど、やっぱ腹立つし何より虚しい。
『…もーいい、アンタのことなんて知らない。勝手に怪我でも何でもしてろアホ』
子供くさい捨て台詞を残して、私は席を立つ。今日は気分悪いし早退してやる。
……そう思うのに、隣から名前を呼ばれてしまえば振り向いてしまうのだから、自分で自分が嫌になる。
『……何』
「ありがとな」
……ほんっと場地ってずるいヤツ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 363人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玲 - おもろい✨続き楽しみにしてるます！ (3月29日 19時) (
レス) @page16 id: ed098355db (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます、励みになります！ぼちぼちの更新になりますが頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2023年3月16日 21時) (レス) @page15 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 面白いです！更新頑張ってください😆 (2023年3月16日 8時) (レス) id: ca28bfbf34 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 甲賀忍者さん» 甲賀忍者さん、嬉しいお言葉ありがとうございます！更新スローペースですが気長にお待ちいただけたら嬉しいですm(__)m (2022年8月29日 1時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 面白いです！留年コンビいいですね！応援させて下さい！ (2022年8月27日 14時) (レス) @page8 id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこもち | 作成日時：2022年7月14日 16時
