12.冷やかし ページ14
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「び、びびったー!!」
「ぶふっ、お前、挙動不審すぎだろ!」
「うっせーな、いきなり名前呼ばれるとは思わねーだろ!!つかお前だって固まってただろーが!」
Aの去っていった後の1組で、先程教科書を返された吉田が止めていた息を吐き出すように、盛大に叫び出す。
それを、隣にいた仲間達が揶揄うように囃し立てる。
彼らにとって、水瀬Aの登場は全く予想していなかったようで。
「千冬っ、なんで教科書貸す相手が水瀬Aだって言わねーんだよ!」
「あ?別に誰に貸すのも同じだろ」
そもそも俺は場地さんに頼まれただけだし、という千冬の心の中の声を知る由もない彼らはなおもAについて話を盛り上げていく。
彼らにとって、Aは只の留年者として馬鹿にできる相手ではないらしかった。
「なーんか威厳あるっつーか、風格あるっつーか」
「まぁ実際頭良いし運動神経も抜群だろあの人。学力テストは学年5位以内、体力テストも男女別で1位だったらしいぜ」
「まじで!?じゃあなんで留年なんかしてんだよ」
「やっぱあれだろ、ヤバい奴と付き合ってて学校サボりまくってた一択だろ」
「いやいや、問題起こして学校来れなくなったに100円」
「裏をかいて引きこもりで登校拒否、2回目1年生でイメチェン大成功に20円」
ギャハハ、と盛大に盛り上がる彼らはもはや千冬の冷ややかな視線など気づくわけもなく。
千冬はひとり、「くだらね」とため息を吐いた。
「でもぶっちゃけめちゃくちゃ可愛いよな」
「わかる、短めのスカートと髪巻いてんの最高」
「ピアスもなんかえろいよな。あといい匂いした」
だよなぁ〜!!と盛り上がる彼らは完全にただの男子中学生である。千冬は若干引いた目で彼らを見ながら、数時間前に場地に言われたことを思い出す。
「アイツ、たまに訳わかんねぇ時あるけどフツーに良い奴だから変な絡み方すんじゃねぇぞ。なんか繊細?っぽいンだワ」
入学してすぐ、焚きつけられるように場地とAを偵察しに行ったことがあるため千冬は水瀬Aの存在を知っていた。
同じダブりでも外見は真面目全開の場地と違ってAはギャル全開。言ってしまえば見た目だけでダブっていると言う事実に説得力がある。
場地がイイヤツと言うならばそうなのだろうけど、千冬は自分に向けられた視線を思い出してポツリと呟いた。
「あれ、ただの気の強い女だろ」
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玲 - おもろい✨続き楽しみにしてるます! (3月29日 19時) (レス) @page16 id: ed098355db (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます、励みになります!ぼちぼちの更新になりますが頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2023年3月16日 21時) (レス) @page15 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください😆 (2023年3月16日 8時) (レス) id: ca28bfbf34 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 甲賀忍者さん» 甲賀忍者さん、嬉しいお言葉ありがとうございます!更新スローペースですが気長にお待ちいただけたら嬉しいですm(__)m (2022年8月29日 1時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 面白いです!留年コンビいいですね!応援させて下さい! (2022年8月27日 14時) (レス) @page8 id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年7月14日 16時