10.混乱 ページ12
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場地が足を止めたのは、1組の教室の前だった。
私と場地が留年者だという話は周知の事実だからか場地と2人で廊下を歩くと遠目からの視線をいつもの2倍、いやそれ以上感じる。
場地はそんなものなんてさして気にしていないようで、我が物顔で1組の教室をぐるっと見渡していた。
「千冬ぅ」
そして場地が友達の名前を呼ぶ。
ちふゆ、という名前に聞き覚えがあった。何で聞いた名前だったかは忘れてしまったけれど。
そんなことを思っていれば、「場地さん!?」と少し驚いた声がしたのちバタバタと慌ただしくこちらへ向かってくる足音。そして、扉からひょっこりと現れたのは金髪のリーゼント頭、片耳ピアスの明らか素行がいいとは言えない人物で。
『……』
いやいやいや、目の前にいるの入学式で騒がれてた奴じゃん。
何千冬、だっけ。松木…松本…松森…いや、松野だ。松野千冬。
そう認識した瞬間脳内で警戒アラートが響き渡る。
場地、アンタこれパシリに使われたのを友達だって勘違いしてる可哀想なパターンじゃないの?
目の前にいるのゴリゴリバリバリのヤンキーよ?ただの、チンピラなんかじゃない。
アンタ友達の定義、知ってる?
「わり、コイツ国語の教科書忘れたみてぇでさ。千冬、貸してやってくんね?」
「はいっ!!もちろんです!!」
私が混乱している中でも2人の間で話はどんどん進んでいく。
そして脳内で鳴り響いていた警戒アラートはそのやり取りのせいで瞬く間に緊急停止、フリーズする。
……なんでヤンキーが場地に敬語使ってんの??
「俺も持ってきてないんでダチのっスけど」
「おー、ありがとな」
『ど、どうも…』
ほれ、と場地経由で渡された教科書を条件反射のように受け取り礼を口にしたけれど、脳内処理はまだ追いついていない。
さらにヤンキーにじぃっとガン見されてるおかげで脳内フリーズどころかまた変な冷や汗が背中を伝い始める。
「バカ、何してんだよ」
そうしていたら、場地がぺしっと彼の頭を引っ叩いた。
ガリ勉メガネが、ヤンキーの頭を叩いた。
いや、お前が何してんだよ。
ほんとにまじで、命は大事にしろよ。
思わず心の中でツッコミを入れるけれど、私の心配をよそにヤンキー君は「すみません、つい…」と場地に頭を下げた。つい…って、何??
もう、私の頭は思考停止どころかパニック状態である。
場地って一体何者なの…??
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玲 - おもろい✨続き楽しみにしてるます! (3月29日 19時) (レス) @page16 id: ed098355db (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます、励みになります!ぼちぼちの更新になりますが頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2023年3月16日 21時) (レス) @page15 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください😆 (2023年3月16日 8時) (レス) id: ca28bfbf34 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 甲賀忍者さん» 甲賀忍者さん、嬉しいお言葉ありがとうございます!更新スローペースですが気長にお待ちいただけたら嬉しいですm(__)m (2022年8月29日 1時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 面白いです!留年コンビいいですね!応援させて下さい! (2022年8月27日 14時) (レス) @page8 id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年7月14日 16時