01.入学式 ページ2
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『やっば、遅刻するよこれ』
巻いた髪が崩れるだとか、短くしたスカートからパンツ見えるかもとか、体裁を全部無視してとにかく全力でチャリを漕ぐ。
別に、間に合わなくても欠席してもいいんだけど。
だって入学式って新入生のためのもので1年生2回目の私は対象外だし。
それでもこうやって一心不乱にペダルを漕ぎ続けるのは、元担任と入学式に行くと“約束”してしまったから。
できない約束はしない、約束したなら必ず守る。
それが、私が自分自身に決めたマイルール。
春らしく桜が満開に咲き誇る学校の通りを抜けて、駐輪場へ飛び込む。各学年、クラスごとにチャリ置く場所は決まってるんだけどそんなの知らないから適当で。
携帯のディスプレイに示された時間は入学式の開始時刻である9時直近で、でもまだ諦めるには早いし頑張れば間に合いそうだ。
乱れた髪を手櫛で整えて、少し乱れた息を整えてから体育館へ直行する。正直式は寝る気しかしないけど、こういうのは参加することに意味があるんだからそこは大目に見てほしい。
受付で時間がかかっているのか体育館入口前はすこし行列が出来ていて、遅刻回避確定にホッと胸を撫で下ろす。
そんな時、たった1人だけ流れに逆らって体育館の入り口とは逆側に向かって歩く1人の男の子が目に付いた。
制服の真新しさから多分新入生、けれど金髪リーゼントに目つきの悪さがそこそこ年季の入ったヤンキーのそれ。
周囲の目を気にせず人の流れに逆らうその子は明らか関わらない方が良いタイプで現に周囲からザワザワと困惑の声と訝しげな視線が送られている。
私はまぁまぁそれなりに空気が読めるので。
とりあえず周りに倣って彼のために道を開け、すれ違いざまにチラリとその顔を盗み見た。
近くで見るとやはりなかなかのヤンキーっぽさを感じる。
片耳ピアスだし猫目が余計に目つきの悪さを増長させてるし。
ヤンキーくんの進行方向的に向かっているのはおそらく体育館裏で、そんなところに用があるのは一世一代の想いを伝える時か揉め事絡みが起こった時か。…彼は十中八九後者だろう。
『ま、私にはなんも関係ないけどね』
頑張れよ名も知らぬ少年、と心の中でエールを送りながら私は体育館の中へと足を踏み入れた。
彼が一つ下の代、というかここら辺では割と有名なヤンキーであったことを知るのはそれから数分後のこと。
───これから先の中学校生活の中で隣で笑い合う仲になるのはもう少し先のこと。
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玲 - おもろい✨続き楽しみにしてるます! (3月29日 19時) (レス) @page16 id: ed098355db (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます、励みになります!ぼちぼちの更新になりますが頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2023年3月16日 21時) (レス) @page15 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください😆 (2023年3月16日 8時) (レス) id: ca28bfbf34 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 甲賀忍者さん» 甲賀忍者さん、嬉しいお言葉ありがとうございます!更新スローペースですが気長にお待ちいただけたら嬉しいですm(__)m (2022年8月29日 1時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 面白いです!留年コンビいいですね!応援させて下さい! (2022年8月27日 14時) (レス) @page8 id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年7月14日 16時