Prologue ページ1
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「あれだけ警告しておいたのになぁ」
そんな台詞と共にはぁー、とそれはそれは深く、風船を目一杯膨らませられるんじゃないかってくらい大きく息を吐き出すのは、昨年お世話になった元担任の先生。
コーヒーと煙草の混じった独特な匂いを纏わせているところは好きじゃないけど、良い先生は誰かと聞かれたら私はこの人の名前を挙げるだろう。
今も、問題を抱えている当本人の私よりも深刻な顔で頭を抱えてくれているのだから本当に教師の鏡のような人だ。
「言いたいことは色々あるが一番はこれからどうするかだな」
苦い顔で渡されたホチキス留めの分厚いプリントを見れば、堅苦しい長文が羅列されていて。
長ったらしく難しい言葉がたくさん使われているけれど、要約すればただ一言。
出席日数足りてないから1年生やり直し
『まさか中学校で留年するとは思わなかったなー。しかも1年生』
「頼むから、今年度こそは真面目に学校来て授業受けてくれ。
お前より場地の方が状況の深刻さを理解してたぞ」
ケラケラと笑ってそう言えば、ジト目でそんな言葉を投げられて思わず目を見開く。その言い方は、私以外にも中学校留年なんていう馬鹿げた挫折をしている人がいると言っているもので。
『…嘘でしょ?』
「……場地圭介、って奴が居てな」
『ばじ……?』
聞き覚えのない名前を何度か口の中で転がしてみるけれど、一向にピンとくるようなものは出て来ない。
「今年転入してくるんだが、場地も1年生やり直しなんだよ。まぁ悪い奴では無いんだけどな……。お前も、出席日数さえどうにかすれば簡単に進級なんてできるんだから」
とにかく学校に来い、と何度も釘を刺す度に顔色が悪くなっていく先生。そりゃあ中学校留年なんて世紀末の大問題児が2人もいたらそうなるのも当然か。
「だってお前、去年の成績『あー、わかった!わかったってば!学校来れば良いんですよね?……もうサボる理由無くなったし』」
「水瀬…」
声のトーンを1つ落として、何故か消沈してしまった先生が可笑しくて思わず笑みが溢れた。何で先生がそんな顔してんだか。
『まぁそれで私が大人しく学校来るわけもないし、真面目な生徒になれるわけもないんであんま期待しないでくださいね』
「あぁ、程々に期待しておくよ。入学式は来週9時からだからな。遅刻するなよ」
できない約束はしない主義の私は、返事をする代わりにニコリと口元だけの笑みを浮かべて職員室を出た。
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玲 - おもろい✨続き楽しみにしてるます! (3月29日 19時) (レス) @page16 id: ed098355db (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます、励みになります!ぼちぼちの更新になりますが頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2023年3月16日 21時) (レス) @page15 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください😆 (2023年3月16日 8時) (レス) id: ca28bfbf34 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 甲賀忍者さん» 甲賀忍者さん、嬉しいお言葉ありがとうございます!更新スローペースですが気長にお待ちいただけたら嬉しいですm(__)m (2022年8月29日 1時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 面白いです!留年コンビいいですね!応援させて下さい! (2022年8月27日 14時) (レス) @page8 id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年7月14日 16時