episode59 ページ12
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『っ……、』
「オラどうしたァ、動きが鈍くなってんぞ」
そりゃあなるだろう。ならない方がおかしい。
それに、不死川さんだって同じことが言えるのに。
心の底からそう思うけれど、反論を口にする余裕などない。
的中してほしくなかった予感は当たってしまい、風柱である不死川さんと一対一の稽古が開始されたのは此処に来てすぐだった。
それから数時間、一度の休みも与えられることなく稽古は続けられている。
「俺の稽古は甘くねぇぞォ、反吐ぶちまけて失神するまで休憩なんてものはねぇからな」
稽古が始まる直前、そう高らかに宣言はされていたが
まさか本気で言っていたとは。
風柱邸に到着し竹刀を交えた時に真上に昇っていた日は、もうすぐ暮れそうだ。
『はぁっ……っは……』
義勇にも長い時間稽古をつけてもらったり、彼から一本取れるまで休みなしの係稽古を行ったりはするけれど。
こんなにもやりづらい稽古はしたことがなかった。
義勇は同門だし、ある程度動きが読める。……読めても全て避けられるわけでもないし、隙を見つけられるわけでもないけれど。
それでも、多少のやりやすさはあった。
義勇の太刀筋は凪いだ海のようで、洗練されている。立ち回りは軽やかなのに、それでいて一太刀に力強さがある。
対して不死川さんは、何というか全体的に荒々しい。
動き全てが野蛮なようで、力技で押し切ってくる感じがする。
けれど荒波の中でも要所要所を的確に突いてくるところが流石柱と言うべきなのか。
そして何よりも面倒なのが、足ぐせの悪さと柔軟な対応力。
どんなに姿勢を崩しても、不死川さんは必ず立て直してくる。
そして竹刀だけでなく、時折足技が飛んでくるのだ。バランスを崩した際に足払いされるだとかそういう程度ではなく、明確に蹴り倒す意思のある蹴り技が。
辛うじて何とか致命傷になるような攻撃は躱してはいるものの、命中すれば確実に骨の1.2本、最悪命まで持っていかれそうだ。
『……』
不死川さんの目は本気で、“彼は危ない”と本能が何度も警鐘を鳴らしている。
でも───
『……楽しい、ですね』
義勇はいつも寸のところで私が大怪我をしないように遠慮するから、こんなに殺気立たれることも圧倒されることも本当に久々で。
辛いけれど、苛烈だけれど、気分が高揚していると感じるのも事実だった。
しかしその直後、不死川さんはまるで信じられないものを見るような目をして、ぴたりと動きを止めてしまった。
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ミミ - 頑張って更新してくださいー! (2022年6月16日 3時) (レス) id: 67844f146c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - ミミさん» ミミさんコメントありがとうございます。羽織のこと覚えてて頂けたの嬉しいです、、。引っ張ってる割にそんな大層なお話じゃないかもしれないんですけどちゃんと書きたいところなので気長に待って頂けたら幸いですm(_ _)m (2022年5月2日 23時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ - 続きが気になります!更新頑張ってください♪ 夢主にとって羽織が大切な理由がいつか出るの楽しみでワクワクしてます! (2022年5月1日 23時) (レス) @page3 id: d6a0546df1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年4月24日 11時