episode48 ページ1
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真っ暗で深くて何もわからない。
そんな場所に、ただ一人私はぽつんとそこに居た。
……これは、夢だ。
架空の世界。私の想像の世界。現実ではない所。
それはすぐわかるのに、この場所から動くことができない。どうすればここから出られるのか、全くもって見当もつかない。
嗚呼、でも
『どうでもいいや』
私は、もう強くなれない。
この左脚では
これから先どんなに訓練を積んでも、頑張っても
以前のように動くことは決してできない。
もう、追いつくことすら叶わなくなってしまった。
それはつまり、私の生きる糧が無くなってしまったわけで。
『……ごめんなさい』
ポロリと口から出てきた謝罪の言葉は、誰に向けたものなのかわからない。それでもその言葉はツキンと胸を刺すようで。
苦しくて、呼吸が上手くできやしない。
呼吸を整えようと努めても、思いとは裏腹にうまく酸素は吸えないままで、どんどん胸が苦しくなる一方だし頭までくらくらしてくる。
夢の中ですらこんなにも息がしづらいなんて、一体何の冗談だろう。
そう思った時───
「いつまでそうしているつもりだ」
何処からか、声が聞こえた。
辺りを見回すが、その姿は見えない。
けれど、聞き覚えのあるその声は決して忘れることなどない、記憶の中のそれと全く同じで。
『…さ、び「いつまで座っているんだ」』
声の主の名を呼ぼうとして発した音は、震えていた。
そしてそれに被せられるようにしてもう一度彼は厳しい口調で問うた。
いつまでそうしているのだ、と。
早く立ち上がれ、と。きっと彼はそう言っている。
でも
『無理だよ』
私にはもう立ち上がるための足がない。
踏ん張れない。頑張れない。
「諦めるのか」
『これ以上何をしろっていうの』
「お前はまだ死んでいない。やるべきことがあるだろう。……あいつを一人にするな。お前が剣を握った理由を思い出せ」
『……』
「お前も、一人なんかじゃない」
真っ暗だったそこに、一筋の光が差し込む。
まるで、私の進むべき先を示されているようだった。
「もう大丈夫だな」
どこか安心しているような、慈愛に満ちた声で彼はそう言った。
何も大丈夫なんかじゃない。
勝手に、満足しないでよ。
どこにも行かないで。
そばにいてよ。
溢れ出る思いは、どれも言葉になることがなくて。
「ずっと、見てるから」
最後に聞こえたその声は、とても優しかった。
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ミミ - 頑張って更新してくださいー! (2022年6月16日 3時) (レス) id: 67844f146c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - ミミさん» ミミさんコメントありがとうございます。羽織のこと覚えてて頂けたの嬉しいです、、。引っ張ってる割にそんな大層なお話じゃないかもしれないんですけどちゃんと書きたいところなので気長に待って頂けたら幸いですm(_ _)m (2022年5月2日 23時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ - 続きが気になります!更新頑張ってください♪ 夢主にとって羽織が大切な理由がいつか出るの楽しみでワクワクしてます! (2022年5月1日 23時) (レス) @page3 id: d6a0546df1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年4月24日 11時