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episode54 ページ8






「っ…でも、そんな都合よくそんな機体がこの白鯨の近くにあるわけが……〈ある〉」


Aの意見を否定する敦の言葉を遮ったのは、無線から聞こえる第三者の声だった。


「この声…鏡花ちゃん!?」


第三者の声に敦は驚きの声をあげるが、芥川とAは表情を崩す事なくそのやり取りを無言で聞く。



〈そちらの状況は聞いた。…この無人機を衝突させれば、街に着く前に墜落させられる〉

冷静に、落ち着いた声でそう話す鏡花に敦は「すごいよ鏡花ちゃん!これでみんな助かる!」と歓喜の声をあげる。
発想(アイディア)は私のものなのだけれど、とほんの少しだけAは不服そうにしながらもそれを口にすることはなく。


『…この状況で機体に突っ込まれれば流石に無傷は厳しいから、脱出の準備をした方がいい』

そう言って我が物顔であちこちの棚を漁り、降下傘(パラシュート)を皆に押し付けた。




「鏡花ちゃん、きみも疾く脱出するんだ」

Aに降下傘を押し付けられながら、敦が無線越しに鏡花に向かってそう声をかける。しかし、鏡花はそれを〈無理〉とばっさり切り捨てた。


『……鏡花は虜囚。少なくとも今のまま(・・・・)じゃ、脱出装置のある部屋まで行けない』

〈…その通り。私のことは諦めて〉

「そんなの駄目だ!軌道を変えるんだ!」

Aの言葉を肯定し、自分の命と引き換えに街を守る、と宣言する鏡花を敦は全力で止める。
そんな敦をAは冷めた声で一蹴りする。

『鏡花が自分の意思でやるって決めたのだから、黙って受け入れてあげたらいいのに』

「…っ、そんな簡単に『誰のために、何のために鏡花がその決断をしたのかわからないの?……光を見せたのは貴方でしょう。最後まで責任は持つべき』」

敦の言葉に被せられたAの言葉は真っ直ぐで、
真剣で。敦は思わず、息を呑んだ。
どうして貴女がそんな強い瞳をしているのだ、とでも云いたげな視線を向けられても、Aは凛としたままだった。



〈これまで私には一片の光も無かった。でも今日判った。私にも、選択肢はあると。きっと私は入社試験に合格できる、探偵社員になれる。…なら、何も惜しくはない〉

「鏡花ちゃん!!」



間近に迫ってくる無人機を前にしても動こうとしない敦の首根っこを芥川が掴み、衝突とほぼ同時に三人は白鯨から飛び降りる。



大きな衝突音と爆風に巻き込まれながら、三人は降下傘を開き、海へと着水した。

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暁月臨(プロフ) - きなこもちさん» きなこもちさんのペースで頑張って下さい!! 気長に待ってます!!(*≧∀≦*) (6月21日 21時) (レス) id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 暁月臨さん» 暁月臨さん嬉しいお言葉ありがとうございます、更新止まり気味ですがそう言ってもらえるととても励みになります!頑張りますm(_ _)m (6月21日 18時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - この作品大好きです!更新よろしくお願いします!!頑張って下さい!!! (6月18日 23時) (レス) @page20 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - きなこもちさん» 了解しました! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 3c71f1d526 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - ミミさん» 私の端末が最近重くてボード開かないので、確認出来次第お返事します、すみませんm(_ _)m (2021年11月11日 0時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年9月23日 20時

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