episode 48 ページ2
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次に目が覚めた時、組合も探偵社も、全ての問題ごとが解決していた。
───なんて都合のいい話があるわけもなく。
「ごめんねぇ、Aちゃん。お休みの話はまた今度でもいいかい?」
呼び出しにより睡眠の邪魔をされた上に休暇撤回宣言
『成る程、首領は私の反逆がお望みでしたか』
これは、多少暴れても目を瞑って許されるレベルの仕打ちだろう。
手始めに首領が最近海外から取り寄せたという盆栽にそっと触れる。
次の瞬間にはその葉も幹も朽ち果て、それらは文字通り消え去る。
首領の声にならない叫びを聞きながら、はて次はどれにしようかと標的を定める。
「待ってよぉ、Aちゃん。私もね、意地悪でこんなことしてる訳じゃあないんだよ。仕方がないんだよ、今回の件は特に」
『“仕方がない”、便利な言葉ですね。…なら私も駄々を捏ねてこんなことしてるわけじゃあないんですよ。
“仕方がない”んです。私の怒りを抑えるには犠牲が必要だって、貴方もよくご存知でしょう』
とりあえず十ほど、首領の部屋にあるものを消して平常心を取り戻したところで『それで、』と首領に用件を尋ねる。
『休暇を破棄してまで頼まれる用件が下らないことであるならば、本気で怒りますよ』
「手厳しいねぇ。……でも、君にしか頼めない事だから引き受けてもらわないと困るんだ」
にこり、と笑みを浮かべながらそう云う首領からは罪悪感の欠片も感じられない。
大きくため息を吐けば、尚も笑顔で首領は恐ろしいことを口にする。
「実はね、探偵社との協定が芥川くんの暴走のおかげで守れそうもないのだよ。…まぁ、彼の独走癖は今に始まった事じゃないけどね」
『……つまり、私に龍之介のおもりをしろ、と?』
「流石Aちゃん、話が早いねぇ。とは云え君に負担をかけ過ぎる訳にもいかない。私のお願いは芥川くんを回収してきてほしい、それだけだ」
勿論彼が地上に戻ってきてからで構わないよ、などと首領は簡単に云うが、冗談じゃない。
『……私に、また彼等に会え、と仰ってます?』
私の問いには答えず、ただニコニコと微笑むだけの首領。……それが、答えだ。
地上に戻ってきてからで構わない、などと云う時点で首領は私が再び白鯨に行くことをご所望だ。
そしてフィッツジェラルドを倒すなり何なりして、組合を潰すこと。
それが、目の前の彼が私に命じていることだ。
嗚呼、本当に人使いの荒い首領の下につくと、碌なことがない。
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暁月臨(プロフ) - きなこもちさん» きなこもちさんのペースで頑張って下さい!! 気長に待ってます!!(*≧∀≦*) (6月21日 21時) (レス) id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 暁月臨さん» 暁月臨さん嬉しいお言葉ありがとうございます、更新止まり気味ですがそう言ってもらえるととても励みになります!頑張りますm(_ _)m (6月21日 18時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - この作品大好きです!更新よろしくお願いします!!頑張って下さい!!! (6月18日 23時) (レス) @page20 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - きなこもちさん» 了解しました! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 3c71f1d526 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - ミミさん» 私の端末が最近重くてボード開かないので、確認出来次第お返事します、すみませんm(_ _)m (2021年11月11日 0時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年9月23日 20時