episode8 ページ10
・
「全身打撲、腕・足に切創・擦過傷多数、右足関節骨折、右足アキレス腱断裂、左大腿においてはあと少し鬼の攻撃がズレていれば神経やられてましたよ」
ニッコリと笑みを作りながら負傷部位の詳細をAに伝える胡蝶しのぶの表情は笑顔ではあるが、纏っている空気は怒りに満ちていた。他人の機微に疎いAですらわかるほどに。
『…ご迷惑、お掛けしました』
「まったく…。これに懲りたら、もう無茶はしないで下さいね」
『…無茶はしてないです』
「貴方のそういう頑固なところはいったい誰に似たんですかねぇ。…怪我を負ったなら、無理をせずその場で直ぐに助けを呼んで下さい。…もっと、周りを頼ってくださいね」
『善処します…』
まったく持って改善する気のない返答に、困ったように笑ってから、しのぶは医者の顔に戻り「さて、治療についてですけど」と続けた。
「骨折に加えてアキレス腱もやっちゃってますから、いくら茅ヶ崎さんと云えど、二週間はしっかり休んでください。あと少し救助が遅ければ低体温症になっていた可能性もあるくらい身体に負荷がかかっていますので、療養期間は大人しくしていること」
『…はい』
「それから機能回復訓練ですが、アオイとカナヲに貴方の相手は荷が重いと思うので冨岡さんに全投げします。頑張ってくださいね」
にっこりと楽しそうに微笑むしのぶに、えっ、と思わずAが声を上げる。
『…いいんですか？』
「冨岡さんには継子の面倒を見る義務がありますし適任者でしょう」
『……？』
しのぶの言葉に、Aはぱちぱちと目を瞬かせた後首を傾げた。
『…義勇に継子なんていませんけど』
一瞬の間。
今度はしのぶが目を瞬かせる番だった。
「茅ヶ崎さん、冨岡さんの継子だったのでは…？」
『…違います』
私と義勇は唯の兄妹弟子です、と言ってのけるAにしのぶはますます首を傾げた。
「水柱邸に住んでますよね？」
『…はい』
「冨岡さんに稽古をつけてもらったことは？」
『手合わせなら、日頃から』
淡々とした様子のAにしのぶは頭を抱えた。
“もはやそれは継子ではないのか”
そう思わずにはいられなかったが、本人が否定しているのに他者がズケズケと物言いすることではない。それに、二人は同門である。鬼殺の道に進む者の多くは何かしらを抱えている。しのぶもその内の一人である為、これ以上踏み込むのは野暮だと考え彼女は口を閉ざした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 504人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです！ (2022年5月8日 19時) (
レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです！ (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです！ (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました！応援してます！頑張ってください！ (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます！とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこもち | 作成日時：2020年4月5日 17時
