episode4 ページ6
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義勇の作った朝食兼昼食を食べ終わり、今度はAが『お茶をいれる』と言って二人で縁側に並んでいる時。
そういえば、とAが呟いたのだ。
『私、“能面”って呼ばれてるらしい』と。
思いもしない言葉に、「能面……」とただ単語を繰り返すだけの義勇にこくりと小さく頷いてAは再び口を開く。
『感情がないって』
「…そうか」
相槌を打ちながら、はたしてそうだろうかと義勇は思う。
確かに昔に比べて感情が全面的に出ることは極端に少なくなったが、それは昔と比較すればの話であり義勇から見れば今でもAの表情は人並みにわかりやすく変動する。
それに仮に感情が薄かったとして。それが悪いことかと言えば、そうでもない。常に冷静な判断・行動が求められる鬼殺において、余計な感情は時に足枷になることがあるから。
「気にする必要は、ないと思う」
言うまでもなく当の本人は気にも止めていないだろうと思いつつ発した義勇の言葉に、案の定Aは『気にしてはない』と被せ気味に返答する。
『少し自覚してるところもある。それに、周りに何を言われようと関係ないと思うから』
ただ───
義勇にもそう思われていたら嫌だなって、そう思った。それだけ。
普段から決して大きくない声が、よりいっそう小さくなる。
言葉を発さずとも目を見れば何を考えているかおおよそ見当がつくのだから、自分がAのことを“感情がない”などと思う日など来るわけがないのに。
案外Aの目も節穴だな、と義勇は密かに思う。
「俺は、Aのことをそんな風に思ったことは一度もない。…Aの良いところは、いつでも冷静で信念を貫き通す強さがあるところだ。感情がなければ、そんなことはできない」
『……うん』
義勇の手がAの頭に乗り、わしゃわしゃと動く。少々ぎこちない手つきだが、Aの頬が少しだけ緩む。
「(こんなにもわかりやすい少女の、どこが能面なのだろう)」
義勇は知らない。
茅ヶ崎Aの感情及び表情筋が仕事をするのは己の前だけであるということを。
そしてまたA本人も全くもってその自覚がない。
互いが互いをいっとう大切に思っていることは、ずっと前から二人とも知っている。
それが、兄妹弟子以上の意味を持っていることに二人が気付くのは少し───否、かなり先の話である。
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きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです！ (2022年5月8日 19時) (
レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです！ (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです！ (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました！応援してます！頑張ってください！ (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます！とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなこもち | 作成日時：2020年4月5日 17時
