episode41 ページ43
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状況は、最悪だ。
何度か頸に刀が届く瞬間もあり、
けれどAが地に伏し、次いで宇髄も片腕を斬られ、序盤で喰らった毒により心臓が止まり。
主戦力であった二人が倒れてしまえば、そこから戦況が急激に悪化していくのは必然で。
もう、意識のある者は炭治郎だけだった。
「お前も鬼になったらどうだ、妹のためにも!」
見下すように、嘲笑うように。
妓夫太郎は炭治郎にそう提案する。
虫けら、ボンクラ、のろまの腑抜け、役立たず。
何で生まれてきたんだ、みっともねぇ、と。
コケにする言葉を何度も何度も吐かれて侮辱される。
それでも───
炭治郎は、決して折れなかった。
どんなにボロボロになっても、
どれだけ力の差を見せつけられても。
独りきりになっても、
決して諦めず、
鬼を倒すという意志が全くブレなかった。
何度劣勢を強いられても、その度に誰かがギリギリまで踏ん張り、
間を繋ぎ、機会を作り、凌いでいく。
どんなに不利になっても、諦めなければ必ず勝機は訪れる。
炭治郎に妓夫太郎の鎌と血の刃が迫り、避けられないところまできた瞬間
彼らの間に宇髄が割って入り、妓夫太郎の攻撃を受け止める。
宇髄の心臓は確かに止まっていたが、それは“死”を意味しているわけではなかった。
彼は、毒の巡りを一時的に止めるために筋肉で、自分の意思で無理矢理心臓を止めていたのだ。
「宇髄さんっ!!」
「“譜面”が完成した!勝ちに行くぞォオ!!」
驚きと歓喜の混じった表情をする炭治郎に、宇髄はそう声を上げる。
“譜面”とは宇髄天元独自の戦闘計算式である。分析に時間はかかるものの敵の攻撃動作の律動を読み、音に変換する。癖や死角もわかり、唄に合いの手を入れるが如く音の隙間を攻撃すれば敵に打撃を与えることができるのだ。
「ちょっと、お兄ちゃ…!!」
そして、妓夫太郎の加勢へ向かおうとした堕姫の前には瓦礫に埋もれていた善逸と心臓を貫かれたはずの伊之助が立ち塞がる。
鬼殺隊に、再び勝機が訪れようとしていた。
宇髄の身体には毒が周り、そして片腕を失った状態では決定的な打撃は与えられない。
「ウォォォォ!!!」
宇髄のサポートを得ながら、炭治郎が妓夫太郎の頸に刀を食い込ませる。
夜明けが、確実に近づいていた。
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きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時