episode28 ページ30
・
『……あ』
「えっ？……ぐふっ！！」
唐突に、何かを思い出したように茅ヶ崎さんが声をあげたから。何だろうと思って聞き返した次の瞬間には俺の腹は茅ヶ崎さんの掌で叩かれていた。
訳が分からず混乱と共に激しくむせ返る俺に対して茅ヶ崎さんからは少し焦ったような匂いがして、『ごめん、そこまで強くしたつもりはなかった…』と小さく俺の背中をさすってくれた。
暫くして漸く俺が落ち着きを取り戻したのを確認してから、茅ヶ崎さんはぽつぽつと言葉を繋ぎ始めた。
『…全集中・常中はできた方が、いい』
「えっ…！？」
『呼吸が乱れやすいのは、常中が出来てないからだと思う。会得できれば基礎体力の向上につながる』
「……」
あまりにも、当たり前のようにそう話すけれど。
全集中って、あの全集中だろうか。だって、少し使うだけでもかなりきついんだ。それを常中って…。
『言葉通り、全集中・常中は四六時中全集中を続ける。会得できれば基礎体力が飛躍的に上がる』
「……あの、」
『…死ぬ気で訓練しても、訓練で死ぬ人はいない。だから安心して、大丈夫』
「…がんばり、ます」
絶対言えないけれど、間違いなく茅ヶ崎さんは鱗滝一門の人だな、とこの時改めて感じた。
それから茅ヶ崎さんは、日が暮れるまで全集中・常中のコツを教えてくれた。
『とにかく肺を大きくして。血の中に空気をたくさん取り込むイメージで』
『慣れるまでは肺を酷使するから、ゆっくり深く呼吸をして指先まで空気を巡らせる時間も取った方がいい』
『でも、そもそも肺が弱いと話にならないから肺を鍛える為の訓練もした方がいい』
色々教えてもらったけれど、やっぱり少し使うだけでも本当につらくて、肺や耳が悲鳴をあげた。心臓が耳から飛び出るかとも思った。
『一日で出来るものじゃない。だからこそ努力が必要で、頑張るしかない』
「はいっ、頑張ります！！！」
俺の返事を聞き、茅ヶ崎さんは満足そうに一度大きく頷いて『じゃあ、私帰るから』と言い残し、あっという間にその場からいなくなってしまった。
「あ、お礼を言えてない…！」
茅ヶ崎さんと別れて暫くしてから礼の一つ言えていないことに気づいたが、その時には既に彼女の姿は見当たらず。
「手紙を出しても迷惑じゃなかな…」
茅ヶ崎さんと、それから冨岡さんに。
改めてもう一度、お礼をしたい。
その後、二人に定期的に文が届くようになるまで、そう時間はかからなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 504人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです！ (2022年5月8日 19時) (
レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです！ (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです！ (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました！応援してます！頑張ってください！ (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます！とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこもち | 作成日時：2020年4月5日 17時
