episode22 ページ24
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気付いたら、見慣れない部屋で寝かされていた。
ツンと鼻につく薬品の匂いとドタバタと騒がしく廊下を行き交う音がして、此処が普段住み慣れた水柱邸ではなく負傷者の手当ての場ともなる蝶屋敷であることを理解する。
「あらあら、目が覚めましたか」
柔らかな声が聞こえて、ふと顔を上げれば部屋の入り口に、両の手で湯呑みを持った胡蝶さんが立っていた。
『…あの』
「冨岡さんから手刀をくらって気絶したので蝶屋敷に運ばれたんです。覚えてないですか?」
『……』
そう言いながら胡蝶さんはくすくすと笑って私が寝かされていたベッドの横に置いてある椅子に腰をかける。
どうぞ、と渡された湯呑みをありがたく受け取りながら、あぁ自分は柱合会議に出ていたのだと記憶を辿る。
『……どうなりました?』
手渡された茶を一口飲んでからそう問えば、胡蝶さんは「誰かさんみたいに言葉を省かないで下さい」、とにっこり微笑んでから、丁寧に柱合会議でのやり取りを教えてくれた。
義勇の行動に一時は皆騒然とするも柱合会議は進められ
不死川さんが禰豆子の入った箱を何度も刺し、稀血である己の血を浴びせたこと。
それでも禰豆子は決して彼を襲うことはなかったこと。
それによって、禰豆子が人を襲わないと証明をすることができたこと。
もしも禰豆子が人を襲った場合は手紙の通り、竈門炭治郎及び鱗滝左近次、冨岡義勇が詫びること。
「今回に限っては、那田蜘蛛山での隊立違反の処罰はありません。よかったですね」
『……』
私が、“よかった”などとこれっぽっちも思っていないことをわかっていて胡蝶さんはそう言うのだから、この人も中々にいい性格をしているなぁ、と思う。口には出せないけれど。
「それにしても、貴女があんなにも強い意思表示をなさるなんて驚きました。意外と頑固なんですねぇ」
『……』
無言を貫き通す私に胡蝶さんは「都合が悪くなるといつも以上に黙り込むの、冨岡さんにそっくりですよ」と小さくため息をついた。
「何があったのかは聞きませんけど、どうせ冨岡さんともうまく話せてないのでしょう。頭の中を整理したいようであれば、いくらでも此処にいて頂いて構いませんからね」
『……ありがとうございます』
素直にそう言えば、胡蝶さんは少しだけ驚いたように目を丸くしてからすぐにいつもの笑みに戻って「じゃあ私は診察がありますから」と部屋を出て行った。
私は、再び背中をベッドに預けた。
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きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時