episode20 ページ22
・
『……ただいま』
水柱邸に帰り玄関口を開けると、私より一足先に自宅へと戻っていた義勇がそこに仁王立ちしていた。言わずもがなご立腹である。
とりあえず、土間に上がりたい。あと「おかえり」と言って欲しい。
そう思うものの、義勇が私に向かってこんなにも怒りを露わにしていることは珍しく、こういう時は何も言わず余計な逆鱗に触れないことが賢明だと経験で学んでいるので黙っておく。
それに、義勇がなぜこんなにも怒っているのかは大方見当がついていた。
「……何故あの兄妹を庇った」
『義勇だって庇ってた。胡蝶さんからあの二人を守る動きをしていた様に見えたのは私の見間違い?』
義勇は私が隊立違反を犯したこと、そしてあの兄妹の存在を知っていたことを義勇に伝えなかったことを怒っている。
でも、それは義勇だって同じだ。
『私は義勇と
義勇が大切にしたいと思うものを、これ以上喪わせないようにすることが私の役目。
義勇が信じたものを、私が信じないわけがない。彼が守ったものは、私も守る。
その為の行動をいくら咎められようと、私は絶対謝罪も反省もしない。
「……」
『……』
互いに譲らず威圧という名の無言の視線を送り続けること数秒、先に折れたのは義勇の方だった。
「…明日の柱合会議にお前も呼ばれている。が、余計なことは口にするな」
私から視線を逸らし、無表情のままそう告げた義勇は「それから」と言葉を繋ぐ。
「俺はお前が隊服を着ていないことにも怒っている。
“同じこと”しかしていないと言ったが、俺は任務中に隊服を脱ぐ様な馬鹿はしない」
『…裸の人がいたから』
瞬間、義勇の表情が怒りから困惑へと変わる。
気持ちは、わからなくもない。私も事情を知らなければ何故任務で裸になるのかまったく持ってわからない。
「…それなら、羽織を貸せばいい」
『嫌だ』
未だ困惑から抜け出せない義勇にきっぱり反論をすれば、彼は再び怒りの表情を向けてくる。
隊服はかなりの強度があり着ているのと着ていないのでは防御面でかなりの差が出る。義勇が私の為を思って怒ってくれているのはわかるけれど、それだけは譲れない。
だってこれは───
「……好きにしろ」
そう言うと義勇は踵を返し寝室へと行ってしまった。
一人残された私は、大きく溜息を吐いた。
504人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時