episode12 ページ14
・
『……よろしければ、どうぞ』
「おぉ、悪いな」
運悪く水柱邸の主の外出中に現れた二人の男は、鬼殺隊の柱だったらしく。
「お前、ド派手にいい面してるな。嫁に来るか」、と初対面で一言目に言われた際には不躾な視線を送ってしまったが。
鬼殺隊の柱と聞けば、それも納得した。
きっと数々の死線を潜り抜け頭のネジが数本飛んでしまったに違いない。
勿論鬼殺隊の中で最も位の高い位置にいる方にそんな事は口が裂けても言えないが。
「…冨岡の継子ってのはお前かァ」
先程出した茶を啜りながら風柱だという不死川さんがそう問うてきた。
『違います。…義勇に、継子はいません』
以前、胡蝶さんにも似たような誤解をされていた為この手の質問は慣れた。
案の定というか、驚いた顔をして互いの顔を見合わせている二名の柱に先日と同じように訂正を入れさせてもらう。
ただし今回はどこで聞いたのか厄介な噂話も持ち込まれた為、それも含めて訂正をした。
『隠を雇っていないのは事実ですが、家事は二人で分担してます。料理の腕は人並みかと。…下弦の鬼を斬ったこと、“能面”と呼ばれていることも事実です』
淡々とそう述べると、ぽつりと「喋れる冨岡って感じだな」と呟かれた。
「…ま、大体わかったわ。じゃあA、俺と派手に手合わせしようぜ」
何が大体わかって何が「じゃあ」なのか此方はさっぱりわからないが、音柱だという宇髄さんはそういうや否や客間から中庭へと移動する。
『…あの』
「おっ、竹刀あんじゃん。…てか量多くね?」
『……義勇との手合わせでいつも折れてしまうので』
「へぇ、あいつも容赦ねぇんだな」
ちらりと不死川さんの方を見やると、わかりやすく視線を逸らされた。つまり助け舟を出す気はないらしい。
「継子じゃないなら別に冨岡への許可は要らねぇだろ」
ほら、と竹刀を一本投げ渡され思わず受け取ってしまう。
『……でも』
「まぁでも柱相手じゃキツいよな。ハンデとして俺は片腕だけ使う、それでどうだ?」
『……』
脳内で、血管が切れた音がした。
その言い方は、私だけでなく義勇まで侮辱されたような気がしたから。
きっと、彼にしたら私に竹刀を握らせるための手段だったのだろうが、それなら効果は絶大だ。
『…わかりました』
そう言って静かに竹刀を構えると、宇髄さんはニヤリと笑った。
504人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時