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episode9 ページ11




コンコンと軽く戸を叩く音が聞こえた直後、ガラリと引き戸が開けられ診察室に義勇が入ってきた。


「診察は終わったか」

「冨岡さん。ノックをしても、返事を待たずに入ってきたら意味がないんですよ」

心底呆れた様に胡蝶さんが大きく溜息を吐く。この人は一日に何度溜息を吐くのだろう、と思ったが「貴方たちのせいです」と返されるのは目に見えていたので黙っておく。


「…怪我は」

「然程酷くはありません。まぁ話を聞く限り崖はかなり高さがあった様ですから一般隊士なら今頃戦線離脱してたでしょうね。茅ヶ崎さんの身体能力があってこそ、この程度の負傷で済んだわけですので。そこら辺も含めて兄弟子ならちゃんとご指導お願いしますね」

「…ああ」

「それから、機能回復訓練については此方で茅ヶ崎さんの相手ができる人材は受け付けてませんから冨岡さんがお相手をお願いしますね。指示は出しますので」

「承知した」


義勇としのぶが淡々と話を進めていくのを張本人のAはただぼーっとしながら他人事のように聞いていた。


「──で、二週間の静養はどうされますか?蝶屋敷で過ごして頂くのが常ですけど。機能回復訓練は水柱邸で行いますし、日頃から其方に住んでるようですから、静養期間から水柱邸でお過ごし頂いても構いませんよ。勿論蝶屋敷に居て頂いても大丈夫ですし」

『……』

Aはすぐに返事を返すことができなかった。
本音としては言わずもがな水柱邸に帰りたいけれど、義勇が静養期間中に何かをさせてくれるとも思えない。
…二週間、自分はただのお荷物になるのだ。


そう思うと、喉から先に言葉を持っていくことができないでいた。




暫くの沈黙。






「Aは連れて帰る」


静寂を破ったのはAではなく義勇だった。


Aは驚いたように義勇の顔を凝視する。“正気なのか”と目で訴えるも義勇はどこ吹く風でそれを無視する。
流石のしのぶも義勇の意思表示は想定外だったようで、少しの間目を丸くしていた。









「では、お気をつけて」

『…お手数おかけしました』

主に見送られながら義勇とAは蝶屋敷を後にする。
抵抗虚しく昨晩と同じように義勇に抱えられたAは少し居心地悪そうに、けれど安心したように義勇に身体を預けていた。

「失礼する」

そう言って蝶屋敷を後にする背中を見ながら、しのぶは本日何度目かわからない溜息を吐いた。



「…あれのどこがただの兄妹弟子なんですかねぇ」

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きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時

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