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episode1 ページ2



ガツガツと、暗闇の中で“何か”を必死に貪り続ける一つの影。
その“何か”はどれも一様にピクリとも動かず、辺りに響くのは影が発する咀嚼音のみ。


「まだ…まだだ、全然足りない…」


そう言葉を洩らした影がゆらりと動き、灯りの溢れる方へ足を踏み出そうとした瞬間。





『…あなた、今まで何人食べた?』



何処からともなく、新たに聞こえたもう一つの声。




影がピタリと足を止める。




「…鬼狩りか。しかも、女」



影の正体は鬼。


そして、新たな声の主は鬼殺隊の少女。




「今まで鬼狩りの奴らも山ほど喰ったぞ。今更女が一人で来たくらいで───」




鬼の言葉は、最後まで続かなかった。



少女が鬼の頸を斬ったからだ。




『…鬼の話には興味がない』



少女は頸を斬った刀を一振りして血を払い、鞘に収めてから片隅にある“何か”には目もくれず歩みを進める。


『任務終了。行方不明として名前の挙がった一般市民及び鬼殺隊員の生存者なし』



伝言を託された鴉が夜の空に飛び立つのを見届けながら、彼女はふと考える。






彼ほど強くなるには、あとどれほど鍛錬を積んで鬼を狩ればいいのだろう。



私が強くなったら、彼は少しは喜んでくれるのだろうか。



私のことを、頼りにしてくれるだろうか。



彼が傷つくのを防げるだろうか。



以前のような笑顔を、見せてくれるだろうか。







『…義勇』


少女の口から呟かれた名は、誰に聞かれることもなく闇へと消えていった。

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きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時

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