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episode38 ページ40






「最初に云っとくがなァ、この塵片したら次は手前だからな?」

「あーあ、矢っ張りこうなった。だから朝から遣る気が出なかったのだよねぇ…」




探偵社と共闘し組合からQを奪還すること。
それが今回Aと中原に与えられた任務だった。


組合にとって、監 禁施設にたった一人で来る探偵社員は予測できてもポートマフィアの来訪は予想外だったらしい。奇襲を仕掛けられ、いとも容易くその場にいた組合員は一掃された。



後は監 禁部屋からQを連れ出してしまえば任務終了。
部屋に罠が仕掛けられている様子も見えないため、組合員が地に伏せている現時点で任務は完了したといっても過言ではない。………この任務を任せられたのが、A、中原、太宰の三名でなかったならば。






「全く…、ここ数年で最低の一年だよ」

「何で俺がこんな奴と……」

ブツブツと互いに文句を言い合う中原と太宰。
その雰囲気は険悪ではあるものの、空気が凍りつくような冷たさはない。
互いに嫌い合っているのは事実だが、何だか小童の云い合いのようだなとAは密かに思っていた。
中原中也も太宰治も個人で見れば非常に優れた才の持ち主なのだが、どうにも互いのことになると精神年齢が十は下がるようであった。

現に今も、監 禁部屋の扉を開けようとするタイミングが同じだったことだけで「俺の隣を歩くんじゃねぇ」だの「中也が私の隣に来たんじゃあないか」だのと云い争いをしている。


こういう時、云い争う二人を宥めて仲介役に入る人物がいれば、物事は多少なりとも円滑に進む。
この場合、神崎Aがその役割に就く──はずなのだが彼女もまた一癖も二癖もある女。



『太宰さん、邪魔です。斬られたくなければ二米(2メートル)は離れてください』

「そうだね、君はそこのチビよりも小さいしうっかり踏んづけてしまいかねない」

『女相手に身長差で優位に立とうとするなんて、相変わらず器の小さい男ですね』




仲裁に入るどころか、むしろ加勢する始末である。






各々がため息を吐き、中原を先頭にそのすぐ後をA、二米離れて太宰の順で部屋へと入っていく。



「太宰、【ペトリュス】って知ってるか」

徐に中原がそう口を開く。

「目玉が飛び出るほど高い葡萄酒」

「手前が組織から消えた夜、俺はあれの八九年ものを開けて祝った。そのくらい手前にはうんざりしてたんだ」

中原の皮肉を「それはおめでとう」、と太宰は口だけの称賛を述べた。

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きなこもち(プロフ) - わたあめさん» ブックマンJr.放置していてすみません。最近自分でも迷走しててどこに突っ走っているのかわからなくなり放置状態にしてました。真逆更新待って下さる方がいるとは思わず・・・。でも、とても嬉しいお言葉です!頑張って今月中に更新します!! (2017年8月17日 7時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ごめんなさい!生意気言って,,, (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ブックマンJrの少女も更新して欲しいです!! (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 赤雲蒼雲さん» 赤雲さん、ありがとうございます!とっても励みになりました!!更新とってもノロノロですが、これからも面白いと思って頂けるよう頑張ります! (2017年4月22日 19時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
赤雲蒼雲 - 面白かったです!更新頑張ってください! (2017年4月17日 11時) (レス) id: 08e4520087 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2017年1月2日 21時

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