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episode2 ページ4




『…君、何処から来たの?』


そんな声に顔を上げれば 先刻(さっき)金銭を奪う対象にしようか迷っていた女性が目の前にいた



「うわぁっ!?」


突然の事に驚き 思わず尻餅をついた僕を見て 彼女は目を丸くした後 くすくすと控えめに笑った



「えっと…」

『あ、ごめんなさい。余りにも面白い反応するものだから…』


戸惑う僕に少しばつが悪そうな顔をした彼女は尻餅をついたままの僕に はい、と自らの手を差し出した


差し出された手をそっと握ると その華奢な腕からは想像もつかない位の力で引っ張られ 容易に立ち上がれた


『大丈夫?』



そう問う彼女と目が合った



薄桃色の柔らかそうな髪に吸い込まれそうなほど真っ直ぐな真っ赤な瞳
瞳と同じくらい真っ赤な…所謂洋装(ドレス)に身を包み皮革上着(レザージャケット)を羽織った彼女は 美しい、と表現するにはまだ幼さが残るようなーーけれど 整った顔立ちで



『……本当に大丈夫?』




今度は怪訝そうにそう聞かれ 自分がずっと彼女を見つめていた事に気付き やっと彼女から目を離した


ぐぎゅぅぅぅぅぅ


ありがとう、そう言おうとしたのと同時に凄まじい腹の音

あぁ、そういえば数日間何も食べていなかった

しかし、なんという間の悪さだろう


彼女は数回瞬きした後 先刻差し出した手とは逆の方の手を差し出してきた

その手には 甘そうな綿菓子が握られていて。


『これ、良ければ。一口食べたけど』

「え、でも…」

『お腹空いてる…でしょ?』

「……ありがとう」

食欲には勝てず 彼女の言葉に甘えて綿菓子を受け取り一気に頬張る


口に入れた瞬間溶けて甘みだけが残る綿菓子では正直腹満たしにはならなかったが、彼女の優しさが……初めて感じた人の温もりが嬉しかった




彼女から受け取った綿菓子が残り僅かになってきた時 急に彼女の表情が冷めたものへと変わった

あまりの豹変ぶりに驚いて 彼女の目線の先を追えば そこには川……に流される人間の足



「えぇっ、あれ、溺れて…!?」

『…溺死するかも』


「でき…!?」





悩んだ挙句 川に飛び込み溺れ掛けている人を救助し河川敷に上がった時 先刻までそこにいた筈の女性の姿はなく……



貰った綿菓子も水に濡れ跡形もなく消えてしまい刺していた棒だけが残っていた



……彼女は一体何者だったのだろうか


そんな疑問が 頭を過ぎった

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きなこもち(プロフ) - わたあめさん» ブックマンJr.放置していてすみません。最近自分でも迷走しててどこに突っ走っているのかわからなくなり放置状態にしてました。真逆更新待って下さる方がいるとは思わず・・・。でも、とても嬉しいお言葉です!頑張って今月中に更新します!! (2017年8月17日 7時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ごめんなさい!生意気言って,,, (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ブックマンJrの少女も更新して欲しいです!! (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 赤雲蒼雲さん» 赤雲さん、ありがとうございます!とっても励みになりました!!更新とってもノロノロですが、これからも面白いと思って頂けるよう頑張ります! (2017年4月22日 19時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
赤雲蒼雲 - 面白かったです!更新頑張ってください! (2017年4月17日 11時) (レス) id: 08e4520087 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2017年1月2日 21時

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