愛とかいて呪と読め【夏油傑】 (ページ7)

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episode.6 ページ7

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掴んでいた腕をスルりと抜けたナオは、タクちゃんを庇うように一重の男の前に立ちはだかる。

その光景を見て、彼女はひゅっと息を飲んだ。

嘘、嘘でしょ。
ナオ、何してるの。何してるの。
自分が何してるかわかってるの。
漫画じゃないのよ。現実なのよ。

キッ、と仔犬のような目で男を睨みつける友人にどっと汗が噴き出す。

煙たくなった部屋が沈黙に沈む。
しばらくして友人彼氏もろとも見下ろしながら、男は冷たい目で言った。

「…キミ、高校生だよね。悪いことは言わない。ソレを助けても良い事なんて1つもないよ。」

男は鼻の頭を掻きながら煙を吐いた。
大きな瞳に涙を溜めたナオは、淡々と事実を述べられて言葉も出なかった。

男の言うことは最もだった。
ぶっちゃけ、ナオがタクちゃんとの縁を切れば少女達は解放される。
無駄な血を流さずに済むのだ。

だが、なかなか引かないナオに、男は心底面倒くさそうにため息をついた。

「それに、キミに何が出来る？」

「…、それは、」

「ソレの借りたお金はね。そうだなぁ…。キミとキミの友達の臓器3人分でやっとお釣りが返ってくるぐらいかな。」

「……っ、」

「それともキミが今すぐ学校を辞めて風俗で働くかい？いい所、紹介するよ。」

男はしゃがんでナオにそう言った。

焦燥感からポロポロと涙を落とす友人に、一重の男はニコニコと笑って煙を吹きかけた。

完全に舐められていることだけはわかった。
どうせ君達には何も出来やしない。
でしゃばるなよ、と。

やめて。やめてよ。
ナオをいじめないで。

と彼女は男に言いたかった。
しかし、喉に突っかかって出てこなかった。

「＿＿＿」

男がナオに顔を近づけ、何か耳打ちした。
途端、ナオがわんわん泣き出した。

水風船が破裂するように、糸が切れたように泣き出した。後ろのタクちゃんは相変わらず脅えていて、ナオを慰めようともしない。

「夏油さん、そろそろ…」

「ああ」

そんな2人に呆れたように〝夏油〟と呼ばれた男はゴツい腕時計をチラリと確認する。

それが合図のように、後ろの男2人が「許してくれ！」と叫ぶタクちゃんを掴んで無理やり立ち上がらせた。

夏油とすれ違う時、ふわりと彼の香水が香る。

「…待ちなさいよ」

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