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episode.4 ページ5









「ナオ、逃げてくれ」






ボロボロの男がナオを掴んで叫んだ。

ナオは男をタクちゃんと呼び、よく見ると彼の左頬は赤紫に変色し腫れ上がっていた。


2人の少女は驚きのあまり言葉が出ない。
一瞬、あの時の記憶がフラッシュバックする。

呆然とする彼女達に、タクちゃんは何かを必死に訴えようとしていた。





「ッ、が」

「逃げんなよォ、タクミくぅーん」





勢いよく飛んできたガラス製の灰皿がタクちゃんを直撃した。倒れた彼にきゃあ、とナオは小さく悲鳴をあげる。

ドアの向こうから男の気だるげな声が聞こえたかと思うと、大きな暴力的な怒鳴り声がアパートに響いた。


中からぞろぞろと2人の大柄の男達が出てくる。


ああ、まただ。またやばい。
明らかにカタギじゃない男達を目にした彼女は、ナオの細い腕をギュッと掴んだ。



男達はひゅ、ひゅ、と短い呼吸を繰り返すタクちゃんを汚物を見るような目でチラリと見た後、怯えきった2人の少女を視界にいれると「お」と声を漏らした。





「もしかして2人ともコレのお友達?」

「まじでJKじゃん、そこ閉めるからこっちおいで」

「きゃ」

「っ、」





ゆったりと言った男達は少女達の制服の胸ぐらを掴んで無理やりアパートの部屋の中に招き入れた。
抵抗する余地もなく狭い玄関に押し込まれて、男の1人が手を伸ばしてカチャンと重たい鍵を閉める。


捲られた袖から見えた刺繍が目に入り、施錠の音がやけにスローモーションに聞こえた。



タクちゃんは大柄の男に髪を掴まれ、ズルズルとリビングの方に引き摺られていく。



それに続くように、彼女達も強制的に進まされる。
2人の後ろには男が張っていた。どうやら帰すつもりはないらしい。




なんで、なんでこんな事に。

私達なにもしてないのに。

今日はナオの誕生日なのに。


プレゼントもまだ、渡してないのに。




男達に案内され少女達はリビングに着くと、ワンルームの端のシングルベッドの上にどっしりと腕を組んで座る男がいた。



あの時のように血の気が引いていく感じがした。


緩く結んだ髪に、大きなピアス、切れ長の一重。








「…やあ、いらっしゃい」







そう言った男は、ひどく優しく微笑んだ。









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もみの樹(プロフ) - ピさん» ありがとうございます!嬉しいです! (2021年7月30日 19時) (レス) id: e680850d36 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - さ、さいこうです、、 (2021年7月30日 14時) (レス) id: 324728c5bd (このIDを非表示/違反報告)
もみの樹(プロフ) - わらび餅の声さん» ありがとうございます!頑張ります! (2021年7月19日 1時) (レス) id: e680850d36 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅の声 - めちゃめちゃ好きです!応援してます!最後までついていきますッ! (2021年7月19日 0時) (レス) id: 720510a825 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もみの樹 | 作成日時:2021年7月18日 18時

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