愛とかいて呪と読め【夏油傑】 (ページ21)

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女の花園にウワサは付き物だ。

「楠木ぃ、ナナミンが呼んでたよぉ」

「あ、うん。今行くとこ」

ある日の平日。

あの手紙から特に大きな問題が起きることもなく、少女は夏油とちょくちょく会ったりして情報を引き出そうとするも尽く失敗していた。

夏油さんが何かを知っているのは確かなのに。
掴みどころのない水のような男だ。

こうなったら私の美貌で色仕掛けしかない！と自分の無い胸を確認しながら、彼女は廊下を歩いていた。

英語の先生兼担任のナナミンに呼び出されたのだ。

「失礼します。七海先生いらっしゃいますか？」

「ああ、楠木さん。こちらに。」

少女はノックをしてから職員室の扉を開けると、ちょうどコーヒーを淹れていた七海がオシャレなマグカップを持って振り返った。

美しい金髪に、カチっと引き締まったスーツ。その真面目な風貌から、この花園では親しみを込めて「ナナミン」と呼ばれていた。

七海に案内されて、彼のデスクの傍に用意されていたパイプ椅子に座るように言われる。

少女がちょこんと座ると、七海はコトンとマグカップを机に置いて、緩んでいたネクタイを締め直した。

彼女はそのアンニュイな仕草をボヤっと見ていた。

「…楠木さん。何故呼ばれたのか、わかりますか」

「はい。今日の英語の小テストで4点を取りました」

「…それもありますが。それではありません」

「……？」

七海はふー、と短いため息をついた。

彼はそれですらも絵になった。
硬い性格故に未だ独身らしいが、この女子校に「ナナミンガチ恋勢」が生まれるのも仕方がないのだろう。

28歳といういい感じの年齢で、さらにはデンマーク人とのクォーターらしい。
そんな男から時折溢れ出るレディーファーストに、小さな蜜蜂達はメロメロになってしまうのだ。

なんて事をほけーと考えていると、ギッと椅子を軋ませて彼は薄くクマのある目で、真剣に少女を見た。

「最近、貴方がガラの悪い人とよく一緒にいるという情報が入っています。」

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