episode.2 ページ3
・
先程の出来事は、たった数十秒にも満たないのにひどい気分だった。
まるで朝からB級映画の胸糞作品を見たような気分だ。いや、B級映画のほうがまだマシかもしれない。
なぜなら映画はフィクションで、さっきのはフィクションじゃない。
現実だ。現実に起こっていた事なのだ。
嘔吐しなかっただけマシだな、と暑くもないのに流れる汗を拭うこともせず、彼女達は手を繋いで身を寄せあって歩いた。
今頃脳がやっと機能しだして、じわじわと誤魔化していた恐怖を思い出させた。
「A、どうしよう…」
「…忘れるしかない」
「…でも、」
「忘れるの。今度あの人達に会っても、普通の人達みたいに通りすぎなきゃ」
怖がる友人を宥めながら、彼女は強く言った。
隠れても、目を逸らしてもダメだ。
普通の人のように、街の人達みたいに、怪訝な目を向けて怯えながら何もせず通り過ぎる。
それが一番自然で、一番普通だ。
2人だけの秘密にしよう、なんて恐怖を誤魔化すように言えば、少女達の脚は少し軽くなったような気がした。
冷静に考えよう。
相手は大人で、私達は未成年だ。
大の大人(しかも怖い人)が高校生を寄ってたかって脅すという事は考えられない。
私達は国に守られてる。
あの静かに血の気が引いていく感じ、こんな思いはもうこれっきりだ。
そう自分に言い聞かせて、彼女は友人の変化に話題を振ることにした。
「そ、そう言えばナオ、最近ちょっと痩せた?」
「…え、そうかな?」
「うん、可愛いくなったわ」
ナオと呼ばれた友人はウフフと笑った。
ちと無理やり過ぎたかな…と彼女は思ったが、それでも友人は「カレシにも言われたの」と機嫌良さそうにピンク色の頬っぺをさらにピンク色にした。
良かったわ、気分が大分楽になってきた。
静かに思うと、心地よい風がさらりと彼女の紅茶色の髪を遊んだ。
この時、彼女はやっと流れる汗を拭って、トクントクンと落ち着いてきた心臓に手を宛てた。
もう二度と…あんな気持ちにはなりたくないな、と心の中でそっと想うのだった。
▷▷
376人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もみの樹(プロフ) - ピさん» ありがとうございます!嬉しいです! (2021年7月30日 19時) (レス) id: e680850d36 (このIDを非表示/違反報告)
ピ(プロフ) - さ、さいこうです、、 (2021年7月30日 14時) (レス) id: 324728c5bd (このIDを非表示/違反報告)
もみの樹(プロフ) - わらび餅の声さん» ありがとうございます!頑張ります! (2021年7月19日 1時) (レス) id: e680850d36 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅の声 - めちゃめちゃ好きです!応援してます!最後までついていきますッ! (2021年7月19日 0時) (レス) id: 720510a825 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もみの樹 | 作成日時:2021年7月18日 18時