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出会い ページ6

彼女がそう言ったのは、今から数日前のこと。

今俺達は、とある場所にいる。

沢山の花が咲き誇り、一面を彩る。
モノクロの世界に、涙をうかべる人々。
お香の香りが当たりをつつみ、煙となって消えて行く。

そう、俺達は、今葬儀場にいる。
誰の葬儀か。


それは、彼女の、「泉玲」という一人の人間の葬儀だった。


死因は飛び降りによる打撲と多量出血。
彼女は、学校の屋上から身を投げ出したのだ。

世界を変えると言っていた彼女は、呆気なく死んだ。


その出来事は、唐突に俺の世界をモノクロへと塗り変えた。



俺が彼女と出会ったのは、まだ新学期が始まったばかりの頃だった。

俺は、世界が憎かった。

数年前、俺の妹は寝たきりになってしまった。
それは、麻薬を使用した人間の車に惹かれてしまったからだ。
その麻薬は、国が製造した失敗作の薬であり、その事件は、薬と妹の存在を巻き込み、隠蔽された。

俺は何度も国に訴えた。
なぜ公表しないのか、なぜ妹のまで隠蔽される必要があったのか。
何度も何度も訴えた。
しかし、所詮は子供の戯言。
国は、俺に耳を傾けるどころか、見向きもしなかったら。


そんな恨みを、俺は小説として晴らしていた。

ある日、学校でものすごく嫌なことがあった。
俺は、誰もいない教室でただ1人黙々と小説を書いた。

やっとそれが書き終わった頃、1人の生徒が戸を開けた。

泉玲。
彼女は誰とも関わらないことで有名で、同じクラスの問題児。

なんだ、とほっと息を着くも、彼女は俺の方へ真っ直ぐやってきて、先程書いていた小説を取り上げた。

無言で小説を読み出す彼女。
俺は、慌ててそれを取り返そうとした。

しかし、彼女はヒラリとそれをかわし、文字の海を泳ぐ。


やがて読み終わったのか、彼女はニコッと微笑み、初めて口を開いた。



『ねぇ君、一緒に変えようよ。
この世界を。このまがい物の幸せを。』

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翔子(プロフ) - ウタカタ。良き響きですこと。センスの光る素晴らしき序文引用ですね。 (2022年7月31日 0時) (レス) @page1 id: af21e2735a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者A | 作成日時:2022年7月31日 0時

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