紅きメリーゴーランドの終焉 (ページ4)

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禁句ページ4

『ねぇ。』

彼女は言う。

『この世界、変えたくない？』

彼女は振り向き、俺の顎をクイッと持ち上げる。

『こんな矛盾している世界、変えようよ。
矛盾を正すの。歪んでいない、綺麗で真っ直ぐな世界に。』

フフっと微笑む彼女。
その動作でさえも、美しい。

『一緒に変えようよ。3人で。』

『私たちだけの世界を作るの。』

誰とも口を聞かない彼女が、唯一口を開くのは、俺と、俺の弟だけ。
他の人間と話しているのは、俺が知る限り見たことがない。

「例えば、どんな感じに？」

俺の弟、「都築京介」が質問する。

『んー、とりあえず、人間の醜さを、本性をさらけ出させるの。
例えば、"戦争"とかね？』

戦争。
遠い昔に失われた言葉。
今の世界には、存在する理由も消された死語。

「戦争・・・？」

京介が困惑する。
それもそのはず、戦争とは、この世界の"禁句"の一つであるからだ。
"平和"を守り続け、祈り続ける人々にとって、人の命を奪う行為は、禁忌である。
だから、死ぬ、殺すなどといった野蛮な言葉も、禁句とされている。

その言葉を今、彼女は放った。
多分、彼女は本気だろう。

なぜなら、彼女の目には、負の感情しか、写っていなかったから。

「具体的に、どうやって戦争を起こすんだ？
今の俺達には、財力も、権力も、武力も何も無いぞ。」

俺は、彼女に加担するかのような発言をする。
京介が俺の事を見ている。
その瞳には、疑問と困惑が写し出せれている。

『別に戦争でなくてもいいの。
世界を混乱させられれば、それでいい。』

『世界が混乱に満ちたら、上のお偉いさん達が準備するでしょ？争いを始める準備を。
そして、世界は戦争を始め、世界大戦が起こる。』

『残る人々は争いに怯え、やがて自ら命を絶つ選択を選ぶ。
そうすれば、もう上のお偉いさん達しか残らないでしょ？
後は、そのお偉いさんを私達が殺せばもうお終い。
世界は私達のものになるわ。』

嗚呼、なんて残虐で、人間らしい考えなのだろうか。
呆れを通り越し、もはや尊敬のレベルだ。

成程、と俺は言葉を放つ。

京介はまだよく話を理解していない様子だった。
それもそのはず、京介は、ここにいる誰よりも、優しくて、単純で、最も人間に近かったから。