01.ありがとう、ごめんね ページ1
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幸せが壊れる時は、
どうやら世界が歪んで見えるらしい。
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「…すみません、先日お電話させて頂きました。白石と申します。」
◯「お待ちしておりました、こちらへどうぞ」
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小さな不動産屋。引き戸を開けて挨拶をすると、優しそうな女性が迎え入れてくれた。
案内された所に座って、少し落ち着くとまた思い出す景色。
どうぞ、と用意された温かいお茶の水面に、毎日笑い合って幸せだったあの日々が映し出されているように思えた。
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【ずっと傍にいてくれてありがとう、ごめんね。 翔】
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大学の先輩で、誰からも慕われていた彼と恋人同士になって4年。
お互い仕事が終わった後、少しお洒落なレストランで食事でもしようかなんて話していた朝が、彼と言葉を交わす最後の朝になった。
仕事中に鳴った電話の相手は、翔の幼馴染の大野さんからで、
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翔は自分で命を絶った。
大野さんは、そう口にした。
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◯「お一人暮らしでしたら、こういったお部屋もありますよ」
「わぁ、素敵ですね、この部屋。んーでも、一人なのでもう少し狭くても大丈夫かな…」
◯「こちらより小さめのお部屋…。あ、でしたらこちらに…」
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次々と出てくる部屋の間取り図。
前に進まなきゃと、翔が私に宛てた置き手紙に書いてあった願いを叶えるためにも、環境も家も全部変えて、新しい人生を生きようと決心したのに
少しでも狭い部屋をと思ってしまうのは、翔と住んでいた二人暮らしには広すぎる部屋を思い出したくないからだ。
少し思い出すだけでも、今にも目の前はぐらついて、立っているのもやっとになる。必ず夜が明けて、朝がやってくるこの世界は、愚かだと思う。
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「…じゃあそこ、見学お願いします。」
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操り人形が作り出す笑顔。
世界が歪む。ぐらぐらと、目の前の景色も、空気も、色も、全部交わってる。
光が眩しい。光を見ていると、全身が痛いと叫ぶ。
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言われるがままにマンションへの見学に向かうため不動産屋を出る。
太陽に当たった瞬間、翔に馬鹿だな、と笑われた気がした。
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私は心の中で、バカだよ。と少しだけ笑った。
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作者名：星雪 x他1人 | 作成日時：2020年5月8日 1時
