そういう目でみてへん【宮治】

27、ノリがいいところ ページ27

『どしたん？』


そう返事をしても既読がつかない。
最寄りに着くまで待ってみたけどダメみたい。



｢治先輩｣


サム兄を起こして、朝来た道を2人で歩く。
駅前はまだ賑やかで、それから酔っ払った大人もいる。
何も言わずに手をひいてくれるサム兄をみて、やっぱり今日の出来事は無駄じゃないと信じたい。

でもなぁ、服でしか女の違いを見分けられないからなぁ。

少し前を歩く大きな背中に、心の中で嫌味を言う。
本人には伝わっていないんだけど、少しだけスッキリ。
ネガティブは性にあわない。

二人きりの無言の心地良さを味わいながら気持ちを持ち直した。
よし。
デートの最後、明日に繋がるなにかをしよう。頑張れ私。


人もまばらな住宅街。
そんな決意を固めた私の前で、突然不機嫌なため息が聞こえた。





｢一大事てなんやねん｣





スマホを睨みながらそう呟くサム兄。

思わずこちらもため息をつきそうになる。
私の最大のライバルはボンキュッボンの女子でもなく、ファンクラブの輩でもなく、結局は双子の片割れの奴なのかもしれない。



｢ツム兄から？｣

｢侑先輩から｣

｢もー慣れへんのや｣

｢戻せばええんとちゃう？｣

｢嫌や｣

｢頑固｣



頭を乱暴に撫でられて私は思わず頬が緩んだけど、サム兄はメッセージの内容の方が気になるらしい。
睨めっこをなかなかやめない。


(デートの最後に邪魔してきたか.....)



今日1日1回も妨害が入らなかったのを神に有難く思う。

一大事、は気になるけど私にとってはこのデートの終わり方の方が大事なので、どうにかサム兄の関心をこちらに戻したい。


「なぁなぁ」

「んー？」

「どんな子彼女にしたい？」




恋愛偏差値中級レベルの人ならみんな
「こいつ俺の事好きなのかな？」
って思うよね、この質問。


だから結構ドキドキして聞いた。

意図を汲み取ってくれるなんて思わないけど、理想にちょっと寄れたらな〜って。


「....メシが上手い子？」


想定内！


「他には？」


まだ突っ込んでくるのか、と少し驚いた様子のサム兄。
絶対に手がかりを掴んで帰る！

今決めた！
家に着くまでの目標！


「えーっと....優しい子？」

「在り来りやな」

「じゃ、おもろい子」

「吉本のネタやったり？」

「おん。ノリがいいのはええな」


誰もいない道に笑い声が響く。
うーん幸せ！
優しさは大丈夫。吉本も好き。
でもそんな子いっぱいいるし、もう少し踏み込みたい！

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