そういう目でみてへん【宮治】

1つ、朝が苦手なところ ページ1

｢宮治！｣



部活帰り。
稲荷崎高校の前で待ち伏せしていた。
いきなりのフルネーム呼びに不思議そうな顔でこちらをみる好きな人。


仁王立ちで腰に手をあて、ムードなんかどこへやら。

でも強がってなければ言えそうもない。

街灯に照らされる整った顔を真っ直ぐみつめて、自分の中の勇気をこれでもかとくらい絞り出す。


ねぇお願い聞いて。
合格したら言おうってずっと決めていたの。



｢私はっ｣






『治のことが好き』


この言葉は口から出てこなかった。


本気で言おうと思って呼び止めたのに、



｢お前元気やな｣

｢アランくん空気よめへんなぁ｣

｢A、ボリューム落としぃ。
よそ様に迷惑やろ｣


ぞろぞろと私とサム兄の間を通っていくバレー部様御一行。


｢空気をよめんのは自分もや！
ツム兄のアホー！！！｣



そう叫べば北さんに｢しーっ｣と人差し指を顔の前に出される。

まただ。
またもやこいつらに邪魔される。


デリカシーのないアランくんとツム兄に心の中で舌打ち。


それが顔にも出てたのか、ツム兄は白目を向きながらアッカンベー。

(ほんまコイツガキや！)

私もやり返すと


｢で、なんなん？｣


なかなか本題を切り出さない私をみつめてサム兄が言った。
じっとみられてドキリと胸の奥が跳ねる。
慌てて出しかけた舌をしまってつくり笑い。
今の顔、みられたよね。


っていうかもう！こんな空気の中言えるわけがない。


言いたくて、好きだと伝えられないのがもどかしいのに






｢私、今日からサム兄って呼ぶのやめるから！！！｣



口から出るのは脱妹宣言

ポカンとまぬけな顔した君にビシッと指をさして言う。


(私のこと、もう妹だって思わんといて)

そっと祈るけどこの鈍感にぶちん男はきっと気づかない。



ごめん！！！これが今の精一杯！！！

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