響音 (ページ8)

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『もしもし？じゅりっ？』

「もしもーし。あ、北斗？」

『うん、そうだけど
ねえ入院ってどういうこと？』

電話越しに聞こえてくる吐息混じりの声

急いでかけてくれたのかな、心配させちゃったかな

「俺もわかんねえけどしろって言われたからさ」

ここで俺が弱々しくいても無駄に心配かけるだけだし
あえての強い口調でなげかけた

『貴方が分からないわけないでしょうよ、
…病院の先生になんて言われたの？』

「え、いやまあ今度話すよ詳しくは」

『俺樹のこと心配でしょうがないんだよ？
マネージャーから入院って聞いた時は生きた心地しなかった』

やっぱり心配させちゃったんだ…申し訳ない、

「それは…ごめんじゃん、 2日だしさ？」

『うん、病気ではないんだよね…？』

「んなわけ、俺が病気かかると思う？」

『それはそうなんだけど…
まあよかったわ。思ってたより元気そうだし、』

「まじ元気よ。だから安心してね」

『うん。わかった、お大事にするんだよ』

「はーい。じゃあな」

嘘をつけばつくほど罪悪感というものが大きくなる

北斗はどう思うかな？俺との間に子供が出来たなんて知ったら。
ただでさえ最近お互い忙しく会えてないのに、

恋人らしいことなんて何も…

気づけば北斗以外のメンバーからのLINEも溜まっていた
もちろん本当のことを言える訳もなく大まかな説明だけして誤魔化したけどね

無事2日間の検査入院が終わり全ての結果とその内容が書いてある書類をもらい帰宅した

資料によると俺の子宮は大人になるにつれ出来上がっていったものらしい。男性妊娠の事例は近年増えてきていて、決して珍しいことではないと書かれていた

確かに最近ニュースで見ることも増えていたけど、それとこれとでは訳が違う

封筒には男性の妊娠・出産に関わったことのある先生がいるという産婦人科のパンフレットも同封されていた

「来週にでも行くか…」

また心配をかけてしまうかもしれない

だからバレないように、仕事のない日に行こうと決めた

退院後も酷い頭痛に吐き気
この症状は一向に治まる気配もなかった

つらすぎて市販薬に手を伸ばそうとする

"赤ちゃんへの影響が心配されるので悪阻を抑えるためだとしても市販薬などの薬は飲まないで頂きたいです"

"もし悪阻が酷いようでしたらこちらで処方致します"

ふと思い出される先生の言葉

どうしようもなく俺は夜まで寝ることにした