響音 (ページ12)

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『今日は体調大丈夫なの？』

楽屋に入るなりすぐさま駆け寄ってきた北斗

「ん、大丈夫だよ」

明らかに大丈夫では無いことは自分でもわかっている

多分顔色も良いとは言えないだろう
できることなら今すぐトイレに駆け込みたい。

ただ心配はかけたくない

だから頑張って耐えてる

こういう時に限って楽屋には俺と北斗の2人

他のメンバーがいれば静かに楽屋を抜けても
バレなかったりするのに

静かな楽屋の中

『朝ご飯、食べた？』

そんな気まずい空気を察して北斗が口を開いた

食べれる訳がない、けどやっぱり心配はかけたくないから

「少しだけね」なんて答えた

そんな俺に北斗は心配そうな眼差しを向ける

『そういえばさ、前の入院なんだったの』

「……」

今聞かれるとは思ってなくて完全に油断してた

『今度詳しく話すって言ってたよね？…今はだめ、かな？』

子犬みたいな目で俺を見る北斗
かわいすぎるじゃんか

そんなこと思ってる場合じゃない、分かってる

でももうどうしても言い訳が思いつかない

" 妊娠 "という言葉が頭にこびりついて離れない

黙ってしまった俺を見て

『いつか教えてくれればそれでいいから
俺は樹が元気でいてくれればそれだけでいい。』

と声をかけてはくれたものの
俺はどうしていいかわからなかった

「…うん。ありがとう
でもごめん、今はまだ話せないかも」

この瞬間、
なんでまだなんて言葉使ったんだろうと自分を責めた
心配かけないって決めてたのに、

"まだ"なんて何か隠してる時に使う言葉でしかない

案の定北斗も眉をしかめた顔で聞いてくる

『そっか、わかった。
…いつになったら話してくれる？』

「分からないけど、その時になったら。」

こう答えるしかなかった

今はほんとに分からない
もしかしたら言わないで終わるかもしれない

でもいつか、いつかほんとのことを言えたらいいなって
そう思ってる自分もいたりして

「…ごめんね」

北斗に聞こえないくらいの声でそう呟いた