夜明けに詠う (ページ3)

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○ ページ3

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オーストリアに住み始めて、数週間が経った

ただ家でゴロゴロしてるのも性にあわないから、ママの知り合いのパン屋さんでお手伝いをすることにした

オーストリアの公用語はドイツ語なんだけど、まだ1つもわかんないから英語で話している

マークやジャニオッパ達のおかげだ、こうして外国に住んでも普通に過ごせるのは

自分でメンバーのみんなから逃げたいって思ったのに、毎日考えるのはメンバーのことだけで

そう思ってるくせに、メンバーから来ている連絡に返事することが出来なかった

本当に、私は弱くて情けない

『［ルア！もうあがっていいよ！］』

「［え、でもまだお昼ですよ？］」

『［ここ最近ずっと働いてくれてたでしょ？たまには早く上がってこの町のこともっと知って欲しいの］』

「［…ありがとうございます、］」

お言葉に甘えて、その日はもう上がった

家の周りとパン屋のことしか知らなかったから、今日は少し遠くに行ってみよう

自転車を漕いで着いた先にあったのは、綺麗な湖だった

「……綺麗、」

こんなに綺麗な場所があったなんて、知らなかった

思わず目の前の光景を写真に撮って、電話帳を開いた

連絡先をスクロールして、マークという文字が見えたところで指を止めた

「みんなの声、聞きたいな……」

いつもこういう時、この感情を共有したいのはマークしかいなかった

あとは文字をタップするだけなのに、私はその文字を押すことが出来なくて

「あー、もう、やめよ」

スマホの電源を切り、近くにあったベンチに座った

自分から離れたくせに、声が聞きたいだなんて。あまりにも自分勝手すぎる

しばらくそこで休憩した後、自転車に乗って家まで帰った

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