【ゲゲゲの謎】憎く、絆され、 (ページ8)

今日:11 hit、昨日:30 hit、合計:14,103 hit

親父が二人ページ8

「じゃが水木、この子の世話はわしも見る。小学校など通わせなくても良いでは無いか」

「それでも通わせなきゃならない。決まりだ。」

『ちょーっと待ってください。兄さんも水木さんも落ち着いて、この子はまだ赤ん坊です。小学校などまだ早い話では無いですか。少し落ち着いてはくれませんか？』

私がそう言えば、コホンっと咳払いをした二人は落ち着いたようだった。それに私も安堵する。村の時から兄さんは冷静沈着ではあったが、なんとも二人は意見が食い違えば無論、言い合う仲ではある。

「すまなかったA、」

「わーった。そちらさんが鬼太郎と名付けたいのであればそうすればいいさ。親はそちらだしな」

「水木･･････」

『え、水木さん。いいんですか？』

「正直な話、部外者は俺だしな。黙っとくべきなのは俺だ。だから、名前とか口出す義理はないしな」

折れてくれた水木さんのおかげで、甥は"鬼太郎"になった。のそりと起きてきた甥を抱っこした私は、満面の笑みでこう言った。

『良かったな！！お前の名前は鬼太郎になったぞ』

「ふんっ、鬼太郎なんざ。なかなかねぇ名前だよな」

「きゃっきゃ！」

笑った。

「「鬼太郎が笑った！！！」」

兄さんと水木さんが近くによってきて鬼太郎の顔を見ながらニコニコと微笑みながら、鬼太郎鬼太郎と連呼していた。

「鬼太郎〜わしが父さんじゃ、お前の父親じゃ」

「きたろー」

微笑んでいた二人が、ちゃんと父親に見えた。待ち望んだ子供だ。守り抜いた宝だ。義姉さんが残した形見だ。狂骨からお前の大事な人が、お前を守ってたんだぞ、なんて、伝える日が来るんだろうか。

『それで、私が叔母だぞー』

「あ〜あ〜キャッ！」

小さな小さな手が、ピタッと私の右目に触れる。私は右目は包帯を巻いてある。見えなくて不便だが、もう視力は戻らないだろう。それでもいい。これも、最後まで義姉さんや、水木さんを守っていた勲章でよいだろう。

「A、」

『うん？』

目を向けた先、机から移動して畳の上で鬼太郎を見ていた兄さんが私を見つめる。そちらに目線を向けた時にギョッとする。

『兄さんなぜ泣いてる！？』

「お前の綺麗な顔を傷つかせてしもうたからじゃ」

目玉からなんとも大きな大粒の涙を流す兄さんだが、小さな腕で涙を拭く仕草を見せた後、私の足からよじ登ってきて足の上で土下座するように泣き始めた。

『ちょっと兄さん！？』