子育て初め ページ7
兄のその言葉はどういう意味が含まれているのか私には考えられはしなかった。だが、兄のことだろう、色々背負わせて済まないということなのだろう。
私は静かに首を横に震る。
『いいよ。きっと義姉さんもそう言ってくれるさ』
と、私は水木さんの方へ目を向けた時。こちらを見て驚いていた。てか近くに立っていたとは思わなかった。
「おっ、はっ、？」
『あ、水木さん』
「なんであんたが？？」
記憶をなくした水木さんは、なんとも悲しきかな、今も私たちを忘れたままだった。
『私は、ある事情があって、その子を、どうする気ですか？』
「交番に預けるわけにゃいかんだろ。俺が育てる。憶えていないが、誰かの姿が脳裏にちらつきやがったんだ。それを見て、俺がこいつを育てなきゃとな」
『そうですか。よろしければ、私たち、、、あぁ〜！私も！お手伝いさせてはくれませんか？』
「はぁ？」
『いや、その子はあの･･････私の、甥っ子･･･ですから』
「そうじゃよ水木！わしの倅でもあるんじゃぞ！」
「うわぁぁ！！目ん玉！！」
兄さんが声を上げるものだから、流石に、赤子を落としはせんかったが、驚いてはいた。水木さんを落ち着かせるよう私は何とか兄さんを手に乗せて指さす。
『ああ！水木さん落ち着いて！その子の正真正銘父親なんです！』
「そんな目ん玉がか！･･････」
「目ん玉では無い！！ゲゲ郎じゃ！！」
『というわけで、一緒に子育てさせてください』
「というわけでって、」
「まぁ、一緒に育ててくれるんだったらありがたい」
こうして、我が甥っ子の子育て奮闘記(仮)が始まったわけなのだが、水木さんはなんとも納得のいかない顔で私らと来てくれることになった。
くたびれた場所での子育てになるのだが、まぁ子の名前をどうするかとした時に。
机の上に乗る兄がこう言った。
「この子は鬼太郎じゃ」
『ほぉ、鬼太郎。妖怪族にしてはいい名前ですね』
頷いて言う私に、近くでスピスピと寝る子を微笑ましく見る。そうか鬼太郎か。
「おいおい、鬼太郎って。普通に太郎でいいだろ」
「ふむ太郎、太郎なぁ、確かに悪くは無いが、この子は幽霊族の末裔じゃ。人間の名じゃ行かんからのう」
「この子は俺が育てることにしたんだ。小学校にだって通わせるのに、鬼太郎じゃまずいだろ」
「なんじゃ、この子を学校に通わせるというのか」
「当たり前だ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 152人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華紅薇 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/maasasr/
作成日時：2023年12月19日 15時
