赤子よ ページ6
そんな時赤子を抱えた男性が赤子を殺そうとしていた。両手で抱え、天に上げ、墓に振り下ろそうとした。その様子を見て、己の子を殺す人間はなんて愚かだと思っていた。
また人間に憎悪を募らせていた。
「ｯ！？」
赤子の容姿、声、男の容姿。
『水木ッ･･････さん･･･』
「A･･････」
誰かが私の名を呼ぶ。
辺りを見渡しても、誰もいない。
「ここじゃよ」
その喋り口調。もしやッ。私は、バッと見下ろした時、そこには目玉がいた。目玉に手と足が生えた。私は思わず尻もちを着いた。
『目ｯ･･････！？！？』
「お前の兄さんじゃ」
『目ｯ、兄さん！？』
確かにその喋り方も、兄さんか。生きてる、と言っていいのか分からないこの感情はどうしたら良いのか。
「あれは･･･････水木と、生まれたんじゃな」
────わしの倅
『せが･･････れ･･･』
目玉の兄さんは水木さんの方をじーっと見つめていた。それに釣られるように私も水木さんが抱えているその赤子に目を向けた。人の姿をしていた時の兄さんに似ているあの赤子。
私は、やはりあれは。と思っていた。
『兄さんと義姉さんの子』
「のぉA」
『･･････なに、？兄さん？』
「岩子は、」
その言葉にズキっと胸が傷んだ。その言葉に、何かを私は身構えた。兄さんの声は少し震えているようだった。
「寂しくはなかっただろうか」
『兄さん』
「岩子だけ逝かせてしまった、わしはまたあいつを一人にさせてしまった」
『兄さん、』
私はしゃがんで兄さんの目を見ながら言った。一つ息を吸ってから話し出す。
『兄さんが、己の目に魂を移したのも、全部あの子のためなんでしょ？義姉さんの代わりにも、兄さんが、あの子の成長を見届けなきゃいけないんじゃない？少なからず、死ぬ時はあたしが看取ったから』
私の言葉に、頭を下げる仕草に、納得してくれたのか分からない。私は、義姉さんが亡くなるときのあの光景を一人で見届けたのは辛くはあった。
「そうか、岩子は、寂しくはなかったか」
『たぶんね』
「Aよ」
『ん？』
「すまなかったな」
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作者名：華紅薇 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/maasasr/
作成日時：2023年12月19日 15時
