【ゲゲゲの謎】憎く、絆され、 (ページ15)

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以前の記憶ページ15

『な、なぜ急に』

驚きのあまりタジタジになった私に、水木さんはいかにも真面目な顔で聞いてきたため、ふざけることも出来ず、私は水木さんの顔を見つめるだけ。

「さっきの人がそう言っていた。記憶を失い、って。どういうことだよ。俺は、何の記憶を失ったんだ？」

少し悲しそうな顔で訊いてくる彼に、私は、唇をかみしめて俯く。

「あの、森の中の時、警察に保護された日、それ以前の記憶が無いんだ。俺が誰かも分からなかった。でも、俺のことは思い出せても。あの時、あの場所で、誰かといたんだ。誰かが、思い出せないんだ。」

水木さんは頭を抱えながら、縋るような声で、私に答えを求めようとしてきた。だが、狂骨に襲われて、彼は幸運にも心を失わずに済んだ。

記憶を代償に。

それを思い出させることが、どれだけ彼の心に負担をかけるか。私は、両肩に置かれた彼の手の温もりが、胸を痛ませた。

いつ日かの夜、彼と二人でいた時。私が遠回しに彼に、胸の内を打ち明けた時、彼は、少し照れくさそうにしてくれた。あの日のことも彼は忘れていた。

「なぁ、A、」

『！？』

「わかってるのか。お前は、全てを」

『私はｯ･･････』

口を開こうとした時。兄さんの叫ぶ声が聞こえてきた。それに私も彼も驚いて、釣られてそちらを見た時。

「Aーー！！！助けてくれーー！！うわぁあ！鬼太郎！わしはおしゃぶりじゃないぞ！！」

なんと鬼太郎が、兄さんを掴んでしゃぶっているではないか。それに私も水木さんも呆然と立ち尽くすが、数秒してから頭が理解して笑った。

『あははは』

「くくっ、あはははっ」

「こら笑うでない！わぁ、鬼太郎！父親を食べるとは！」

「あ？うー？」

鬼太郎は、なんとも思ってない顔でただただ、理解出来ぬ頭では自分の父親を食べてかけているとは思ってもないだろう。

「目玉の姿も大変だな！」

腰に手を当てた水木さんが、ケラケラと笑いながら、その光景を眺める。私も笑いながらその光景を見つめているが、兄さんが何を思ったのか。

「鬼太郎がわしを食うということは、蛙の目玉も食えるのでは無いのか！！」

『何を言ってるのですか兄さん』

私は半ば呆れながら、鬼太郎と兄さんを引き離した。そして、ベトベトに涎だらけになった兄さんを手ぬぐいで拭いた。