人間と妖怪の共存 ページ13
兄さんの言葉に、兄さんを失いかけた時、義姉さんを失った時。何もかもが、人間の恨み辛み、欲のせいだった。そんな中で私は思った。
義姉さんの代わりになればよかったと。
人間を恨んでいたと。
「じゃがA、」
『･･････』
足の上で握った拳を強く握りしめた。兄さんの言葉を真剣に受け止める心の準備をした。
「わしは岩子の思いも大切じゃと思うが、Aの想いはどうなる。心挫けそうでも、一生懸命人間の行いを善と認めるのは荷が重すぎるじゃろう」
「わしは、AはAの気持ちを尊重したいのじゃ」
『兄さん･･････』
「この子にも、こう言って聞かせるとしよう。人を助けるのは良い。じゃが、情けは人の為ならず。情けをかけすぎると己を滅ぼしてしまうからのう」
『うん、』
その時鬼太郎が、はいはいをしてこちらにやってきた。私の膝に小さな手を乗せて、あうーあうーと何かを訴えるように喋りかけてきた。
「きっと、鬼太郎もAにそうじゃそうじゃと伝えておるんやろうなぁ」
『そうかな。おばば』
おばばは、先程までの様子とは打って変わってまた愛おしそうに鬼太郎を見つめていた。私は、鬼太郎の頭を撫でながら心の底に思っていたのを言った。
『人間はやっぱり、憎めない。それはきっと。この子が生きる未来であり、岩子さんが想い続けた願いと、私自身、水木さんのおかげで大きくかわれた』
「うむ、それで良いと思うぞ。」
人間が生きるこの世界と、妖怪が形見狭く生きる世界。どちらが幸せかなんて分からない。でも、鬼太郎が生きる世界、岩子さんが生きていたこの世を私は、その間を生きてみたくなった。
「ったく、道に迷ったら遅くなっちまった」
丁度いいタイミングで、水木さんがドアをガラッと開けて入ってきた。だが、おばばの顔を見て固まる。
「砂かけ、先程話した水木じゃ。良い奴じゃよ」
「お主が水木殿か！色々話したいことがあるのじゃが、いいだろうか」
私が、テケテケと玄関に向かって少し顔が強ばる水木さんの前に立ち、耳打ちをした。
『すみません、急遽こちらにやってきた兄さんの顔馴染みの妖怪です』
「また妖怪か！？」
『悪い妖怪ではありません。私も小さい頃からお世話になっている方ですので、』
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作者名：華紅薇 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/maasasr/
作成日時：2023年12月19日 15時
