第105話─飴と鞭─ ページ10
A_side
隠してた傷がバレた。折角、ずっと必死に隠していた傷をこんな時に晒してしまうとは。
必死に云い訳を探した。けれど、見当たらない。
「敵に殴られて出来た傷」
太宰「そんな訳ないでしょ、この傷は明らかに結構前のものだよ、正直に話して。学校を辞めたのと何か関係があるの?」
その瞬間に必死に働いていた思考が停止した。使い物にならなくなり、静かに自分の目は瞬きを忘れ見開いていた。
「そんなわけっ・・・・・・」
太宰「じゃあ、之は唯の遊びだと思って出来た傷って訳?この傷も、明らかに痣じゃなくて、この赤い線はどうみたって、自傷でしょ?」
自分は何も云い返せない。返すどころか返す言葉すら思い浮かばない。静かに自分は黙ってた。
兄の包帯の手が伸びてきて自分の両頬を包んだ。そして、部屋に乾いた音が鳴り響いた。自分は、頬の痛みが何なのか判らなかった。
急な事だった。何も、何が起こったかすら。
左頬が痛かった。自分は呆然とその頬を押さえた。兄が、私の事を叩いたのだと気づくのに数秒後経ってからだった。
目頭が熱くなり、目から涙がぽろぽろ流れた。口の中が鉄の味がした。誤って頬の内側を噛んでしまった。
そして、歯を食いしばって耐えようとした。兄が嫌い。そう云って兄を睨みつけた。
兄は叩いたまま固まって私を見つめていた。失望したかのように、悲しんでいるように。自分は兄を押して出ていこうとした。
それは叶わなかった。
自分はいつの間にか兄の胸の中に収まっていた。追いつかなかったのは思考だった。久しぶりに感じる兄の温もりと、兄の匂い・・・・・・本当か判らない兄の優しさ。
叩いた癖に抱きしめて、何がしたいのか判らない。
「はなっ、せっ!」
力の入らない手で兄を叩いても全く通用しなかった。其れ処か、強く抱きしめられるだけだった。云っておくが私は怪我をしている。痛いのもある。が、速く兄から離れないと自分が壊れてしまいそうだ。
ずっと抑えてた感情や、甘えたいのを。
自分の後頭部が、暖かく感じた。撫でられている。空いた手で私の頭を撫でていた。その瞬間に全ての力が抜けた。眠い。そして、自分は兄に体重をかけるように眠ってしまった。
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華紅薇(プロフ) - 麗さん» コメントありがとうございます!そんな風に言っていただけるとすごく嬉しいです!この話も後編に移りますのでそちらの話もよろしくお願いします!読んで下さりありがとうございます! (2021年10月20日 11時) (レス) id: b469182880 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - この小説本当にめちゃくちゃ大好きです!そして今めちゃくちゃ続きが気になってます、!!なんかキリが悪い所でのコメントですが、応援していることを伝えたかっただけです!これからも楽しく読ませていただきます! (2021年10月20日 2時) (レス) @page50 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚Aya | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/maasasr/
作成日時:2021年9月29日 12時