Episode41 ページ41
再び目を覚ますと、室内は暗闇だった。
枕元のデジタル時計に目をやると、まだ深夜の時間だった。
(喉乾いたな…)
確か平野くんがサイドボードにドリンクを置いててくれたはず…と思い出し、右手を伸ばそうとすると誰かに手を握られていることに気づいた。
まさかと思い、ベッドサイドを見ると、そこには私の手をきつく握りしめたままベットに突っ伏して眠っている平野くんの姿があった。
(あぐらかいて座ったまま眠ってる…)
私は急いで彼の体を揺らして起こした。
「平野くん、起きて！」
「んん？あ、俺眠っちゃった…」
目をこすりながら体を起こした平野くんに、私は遠慮がちに声をかける。
「そんな体勢で寝てたら疲れるし風邪ひいちゃうよ」
「俺のことなんかより、そっちは？具合、どう？」
私の顔を覗き込む彼の瞳はどこまでも優しい。
「うん、もう随分いいみたい」
「あ〜良かった〜」
「あの〜ところで…平野くん？」
「ん？」
「もしかしてあれからずっと、手、握っててくれたの…？」
私の言葉に、自分が私の手を握っていることに今頃気づいた様子で、彼は少し照れながら「あ、あぁ…まぁね」と頭をかいた。
「ありがと。もう、大丈夫だから…」
私はそう言うと右手を彼の手の中からそっと抜いた。
熱にうなされていた時は人肌恋しくて、つい手を握ってほしいなんて言ってしまったが、熱が下がり平常を取り戻すと、叫び出したいくらい恥ずかしい。
「じゃあ俺はリビングに戻るわ。何かあったら遠慮なく呼んで」
「うん、ありがと」
そう言って部屋を出る平野くんの背中を見送っていると、ふいに彼は立ち止まりこちらを振り返った。
「Aさんもさ、もっとワガママ言ったり甘えたり、頼ったりしていいんじゃない？」
「え…でも…」
「少なくとも俺は、今日嬉しかったよ。手、握っててほしいって言ってくれて。俺にはさ、遠慮しないで何でも言ってよ。愚痴でも弱音でも、何でもいいからさ」
そう言い残すと平野くんは私の返事も聞かずに部屋を出て行ってしまう。
その背中を、私は頼もしく見送った。
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さや(プロフ) - chihiropooh1123さん» コメントありがとうございます！嬉しいです！ 頑張って続き書きます！！ (2018年6月11日 0時) (
レス) id: d50237b6e9 (このIDを非表示/違反報告)
chihiropooh1123(プロフ) - 凄く楽しませて貰ってます。次回話楽しみにしてます。 (2018年6月10日 15時) (レス) id: 016550d6cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SaYaKa | 作成日時：2018年6月2日 2時
