Episode31 ページ31
「送ってくれてありがとう。今日は楽しかった」
運転手さんに「少しだけ待っててもらえますか」と声をかけ、一緒にタクシーを降りた岸くんに向かって頭を下げる。
「いやいや。僕も楽しかったですよ。Aさんと仕事のこととかプライベートなこともいろいろ話せたし」
そう微笑む岸くんは、好感度抜群で、彼がファンからも仲間からも愛される理由が、何となく分かる気がした。
「また、誘ってもいいですか？」
少しの沈黙の後、岸くんが切り出す。
「うん。もちろん。話したいこととか相談とか愚痴とかあったらいつでも言って。いいアドバイスはできないかもしれないけど、話くらいは聴くからさ」
そう言っていたずら心で彼の肩をポンッと叩くと、真剣な視線が向けられてドキッとする。
「俺、Aさんのことが好きです。マネージャーとしてじゃなく、１人の女性として」
「え？」
あまりにも予想外の展開に言葉を失う。
「初めて会った時からすごくいいなと思ってて、会えば会うほど好きになって、自分でも驚くくらい、今、頭の中はAさんのことでいっぱいで･･･」
勢いよくそう言った後、彼は言葉を探すようにうつむいた。
「岸くん…」
１歩足を踏み出して、距離を詰める。
「ありがとう。岸くんがそんな風に思ってくれてるなんて、全然知らなくて、正直今はびっくりしてる」
ゆっくりとかみしめるように丁寧に言葉を続ける。
「岸くんの気持ちはすごく嬉しいけど、私、そういう風に岸くんのこと考えたことなくて…」
「分かってます。Aさんが俺のこと好きじゃないってことくらい。ずっと見てたから。俺も他のメンバーと同じようにしか今は見れないかもしれないけど、これから少しずつでいいから、俺のこと男として見てもらえませんか？一緒に食事したりたまには出かけたりしながら、俺のこともっと知ってもらいたいんです。ダメ…ですか･･･？」
初めて見る不安そうな彼の顔に、私は「ダメじゃ･･･ないけど…」と答えるのが精いっぱいだった。
そんな私に、「良かった。断られたら明日からどうしようかって心配だったんだ」と安心したように笑う岸くんを見て、私は素直にいい子だなと思った。
「じゃあ、また明日」
そう言うと岸くんは待たせていたタクシーに乗り込む。
笑顔で手を振る彼を乗せたタクシーが走り去るのを、私はくすぐったいような気持ちで見送った。
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さや(プロフ) - chihiropooh1123さん» コメントありがとうございます！嬉しいです！ 頑張って続き書きます！！ (2018年6月11日 0時) (
レス) id: d50237b6e9 (このIDを非表示/違反報告)
chihiropooh1123(プロフ) - 凄く楽しませて貰ってます。次回話楽しみにしてます。 (2018年6月10日 15時) (レス) id: 016550d6cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SaYaKa | 作成日時：2018年6月2日 2時
