Episode47 ページ47
私…おかしい…
女性誌の撮影中、体調が悪くなったモデルさんの代わりに、カメラテストでモデル役をすることになってしまった。
どうしても平野くんを見つめることができない私に、彼は「俺を岸くんだと思って」と言った。
そんなこと言われても、岸くんだとは思えないし、思えたところで恥ずかしいのに変わりはない。
それでも、私がちゃんとやらないと撮影が進まない。
現場の空気が少しずつ悪くなっていくのを感じていた私は、頷いて目を閉じる。
気持ちを落ち着かせた後、目を開き平野くんを見上げる。
不思議なことにさっきまでとは打って変わって、笑いが出たり恥ずかしさを感じない。
その代わり今まで平野くんと一緒にいた日々を思い出す。
口が悪くいつも喧嘩腰だった初めの頃。あの時は彼なりに、新しいマネージャーがどんな人間なのか不安だったのかもしれないなと、今は思う。
マンションの下に不審な女がいると電話を受けた時は、背筋が凍るほどヒヤリとした。彼に何かあったら…と思うと、私は考えるよりも先に家を飛び出していた。
意に反して一緒に暮らすようになって、最初は本当に嫌だったけれど、今では家でのひと時が一番心落ち着く時間だと言わざるを得ない。
そして先日、私が体調を崩した夜は、本当に心配してくれてずっとそばにいてくれた。
終始オロオロしていて、「大丈夫？」「辛い？」と何度聞かれたか分からない。
でもその優しさは、弱った私の心に沁みた。
そんなことを考えていたら、「はいオッケー！」とカメラマンさんの声がした。
どうやら私が色々と思い出しているうちに撮影が終わったらしい。
安堵して小さく息を吐く。
平野くんのことを考えていた間、私はどんな顔をしていただろう？検討もつかない。
ひどい顔をしていたかもしれない。
「お疲れ様」
平野くんがそう言って優しく頭を撫でてくれる。
「うん、疲れた」
そう言って私達はどちらからともなく笑った。
その瞬間…ふいにカメラのシャッターが切られたことに、この時の私達は全く気づいていなかった。
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さや(プロフ) - chihiropooh1123さん» コメントありがとうございます！嬉しいです！ 頑張って続き書きます！！ (2018年6月11日 0時) (
レス) id: d50237b6e9 (このIDを非表示/違反報告)
chihiropooh1123(プロフ) - 凄く楽しませて貰ってます。次回話楽しみにしてます。 (2018年6月10日 15時) (レス) id: 016550d6cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SaYaKa | 作成日時：2018年6月2日 2時
